異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 28
呼吸を整えて、今ある現実を直視しよう。
我々はダンジョンに入ってマジックアイテムの威力を視察する。
よし、話しは簡単だ。手早く済ませて女の子の散策をしようじゃないか。
「全然現実を直視できてないんですが……」
「いやいや、アルマくん。寄り道もいいが最初に立てた目的を忘れるようではいけないよ?」
空元気を振り回す僕を見て、どういうわけかアルマくんは呆然とする。少し疲れたのかな。無理もない。ずっと我々の視察に付き合わせてしまったからな。薔薇の塔の周囲は素晴らしい薔薇園がある。ひとつ小休憩を取るのもいいかもしれない。
「小休憩が必要なのはサンジェルマンさんですよ。まぁでも、状況を整理してから次に進んだほうがいいかもしれません。超展開すぎて……」
シェリーくんの提案に、アンチクロス・ギルティブラッドと紹介された彼女が言葉を続ける。
「たしか、あのクソアマにもガキがいた。アルマ、俺のガキになれ」
言葉を続けただけで、シェリーくんの言葉をキャッチ&リリースしたわけではなかったようだ。
クロくんがアルマくんに無茶ぶりすると同時に、薔薇園の手入れに来ていたセチアくんが鬼の仮面、もとい、鬼の形相でクロくんに迫る。
「なに言ってるんですか!? アルマは誰にも渡しませんよ!?」
「え……アルマは誰のものでもないはずなんですが…………」
「なんだてめぇ。俺より弱いくせに意見すんじゃねえ」
なんだこの泥沼展開。アルマくんが可哀そうだ。
それにしても、クロくんは口が恐ろしく悪いな。見た目の大人っぽさに反して声が超かわいい。でも口が悪いから脳がバグりそうになる。
誰かどうにか収集をつけられないものか。話しが一向に進まん。
レオくんがリアルなファイトになりそうな二人の間に割って入った。
「まず問題を整理しよう。俺とクロちゃんは結婚する。これはオーケー」
「レオさん、ほんとにそれでいいです?」
「電撃結婚は離婚の前兆では……?」
ニャニャくんとリリィくんが切に心配した。
レオくんは意にも介さず話しを続ける。
「俺がクロちゃんを幸せにする。これもオーケー」
「今の問題はそこではないでしょう」
シェリーくんの指摘もレオくんは華麗にスルー。
「子供が欲しいなら、俺と一緒に作ればいい。これもオーケー!」
「子供ってどうやって作るんだ?」
「………………えっ……と……」
え、マジで?
こんな公衆の面前でセクシャルな話しをしてもいいものなのか。またも硬直してしまう。レオくんが動くより早く、初心なセチアくんが赤面して声を荒げた。
「なっ、そんなっ、こんな真っ昼間からなんてこと言うんですかっ!」
「は? なに言ってんだ、こいつ」
どうやらクロくんは本当に子供の作り方というものを知らないようだ。
まぁそういうプライベートな話しはあとでするようにと、レオくんに促すも、彼が言葉をかけるより先に金髪ツインテふりふりフリルの少女が堂々と知識の風呂敷を広げた。




