異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 26
どうしても受付嬢のお尻が見たい。そうと決まれば善は急げだ。
まずは簡単な挨拶とともに持ち物を褒めよう。
「こんにちは、お嬢さん。そのブレスレット、とても似合ってますね」
「ありがとうございます。見かけないかたですが、ご用件はなんでしょうか?」
あ、ダメだ。これは。仕事に実直でプライベートの話しはしないように教育されてるな。
じゃなくて!
いかんいかん。ついついいつものナンパ癖が出てしまうところだった。
「実は僕たちは異世界からメリアローザの魔法技術の視察に来たんだ。それとはすこしズレるんだけど、メリアローザにはダンジョンがあって、冒険者がいて、モンスターを討伐するという。できれば討伐したモンスターを見てみたいんだけど、案内してもらっていいだろうか?」
受け付けの女の子は、なるほどと頷くも、困ったような表情になって両の手を閉じた。
「申し訳ございません。討伐されたモンスターは血抜き処理や殺菌作業がありまして、専用の防護服を着た人しか部屋に入れないんです。加工して食肉になったものなら冷暗室にあるのですが、そういったものを見たいのではないですよね?」
「なるほど。それなら仕方ない。知らなかったとはいえ、無理を言ってしまってすまなかった」
くぅ。アプローチを間違えてしまった。
あまりしつこいようだと心象を悪くしてしまう。ここは潔く引き下がるとしよう。
ちくしょう!
そうこうしているうちに手続きが終わったようだ。
向かう場所は27層【フリーダム・フロウ】。比較的穏やかな性格のモンスターが生息しており、一部地域は開けた草原地帯であるため、魔法をぶっ放すにはもってこいの場所だそうな。
というのは結果論。実際はアルマくんが魔法の実験と言って、魔法をぶっ放しすぎて原っぱにしたため、モンスターたちも寄り付かない焼け野原になってしまっただけだった。
さて、惜しむらくも仕事に戻ろうかと、その時だった。
薔薇の塔。黒塗りの土壁に緑の蔓が這う暗黒から絶世の美女が現れた。ふわりと軽い金髪をなびかせ、チューブトップにホットパンツという健康的な脚線美を惜しみなく押し出した足取りはモデルのように力強く軽やか。
頬からお尻にかけて真っ赤なバラと蔓が生い茂るタトゥーが鮮烈な女性。
これはぜひとも声をかけなくてはッ!
そしてディナーのお誘いをしようッ!
本能的に早歩きになるのは僕だけではなかった。
レオ・ダンケッテ。僕の後輩でもある彼も肌に咲く真っ赤なバラに吸い寄せられるように彼女の前に立ち、美女の両手を取り、足払いを食らって転倒。背後を取られ両腕を背中に回されてロック。地に組み伏せられてダウンを取られた。
その間、わずか1秒。なんという早業。見事な体術である。




