異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 23
それにしても、メタフィッシュの次にインスタントマジックかと思ったら、龍穴と同じ環境を作り出す力場が登場とは恐れ入る。これごと持って帰りたい。同じ装置、同じ材料を使えばベルンでも再現可能だろうか。
まずはインスタントマジックの違いを体験してみよう。
「おぉっ! 触っただけでわかるマジックアイテムの練度の違い! 威力にして4、5倍は差が出そうだ。レオくんはどう思う?」
僕よりずっと魔法技術に精通する彼の額に冷や汗が出た。
「正直言って、マジかって感じっすね。こんなの、世界中どこを探しても、これに比類するものはありませんよ。インスタントマジックから既にこのレベルって、魔剣を見た時から分かっちゃいましたが、これは相当ヤバいっすね」
「君もそう思うか。それに攻撃系から補助系、防御系まで幅が広い。魔術回路も実に丁寧で精巧な作りだ。全部欲しいなぁ」
「ぶっちゃけ、見ただけだと俺らの世界のインスタントマジックの上位互換ばっかり。これは歴史が変わりそうな予感がします」
うぅむ。技術供与を受けたとしても、一般に販売するインスタントマジックは種類を限定せざるをえないな。
メリアローザの冒険者はダンジョンに入ってモンスターを討伐するという。だからマジックアイテムは全力で攻撃力に振り切るのだろう。
対して、我々の世界の魔獣は市街地にも出没する。あまり攻撃力が高すぎると他人を巻き添えにしかねない。輸入するとして、魔法技術は慎重に選ばなくては。
インスタントマジックを確かめたところで、気になるエーテル体結晶について聞こう。見た感じ、それさえあれば同じ設備が作れそうな予感。
「エーテル体結晶とは?」
「簡単に説明すると、結晶化した魔力のことです」
目に見えない不可視の粒子である魔力を固体にする、だとッ!?
これに近いものにエーテル水がある。エーテル流体とも呼ばれるこれは、錬成した魔力を凝縮することで流体に形を変えた魔力である。熟達した魔術師と最新鋭の設備でもってようやく作ることのできるエーテル流体は、魔術の儀式や魔法の発動、魔力を人体に直接取り込んで魔力を回復させたりと使われる。
理論上、結晶化させることは可能と言われているが仮説にすぎず、誰一人として成功した者はいない。
なんてことだ。エーテル体結晶なんて存在が世に出たら世界がひっくり返る。
あと、エイリオス氏が暴れ出すに違いない。あの人は魔法のためならなんでもするからな。
二つの意味で危険なアイテム!




