異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 21
昼食はエルドラドの大食堂でいただくことになりました。
客人がいるということで少々豪華な内容である。昨日の夕食は我々の知るパーティーメニューとは毛色が違うものの、本当においしいディナーだった。
今回は昼食。どんなランチが出てくるのだろう。
まずは天麩羅。キス、れんこん、マイタケ、しいたけ、さつまいも、しその実。
メインは水餃子。なんとこの水餃子。用意された具材をみんなが好き勝手に詰め込んだアラカルト水餃子。
まさかのロシアンルーレット方式!
「これはまた、なにが入ってるのか楽しみだ」
躊躇する我々を前に、すみれくんが元気いっぱいな笑顔を振りまく。
「基本的に豚のひき肉が入ってるので大丈夫です。具材はネギ、しょうが、大葉、しその実、エビとエビのすり身、白身魚のすり身、山芋、などなど、山の恵みと海の恵みが盛りだくさんです♪」
「それはおいしそうだ。天麩羅にもあるけど、しその実なんて珍しいね。僕も食べたことがないや」
「しその実は花が咲いた後の少しの間しか収穫できないので、実は激レア食材なのです! ほんのり爽やかな酸味がクセになるひと品です。塩を振ってもいいですし、ほかの天麩羅と一緒に食べてもおいしいです」
「ほほう。それは面白い。ではひと口」
サクッ。
もぐもぐ。
うまいっ!
適切な温度で揚げられた天麩羅は外はサクサク。キスの天麩羅はふわっとやわらか。マイタケはぷりっと噛み切れ、独特の香りがふわりと鼻をくすぐる。
うまい。どれもこれも絶品だ。
水餃子はおいしくて面白い。どれも味も食感も違う。当然のように全部おいしい。
子供たちも大人たちも大満足。エルドラドの定番料理になりそうだ。
♪ ♪ ♪
お昼からはメリアローザの魔術師組合に魔法技術の見学。場所は魔法道具の販売所。冒険者であろう一般客の姿もある。ここにはメリアローザで開発されたほとんどのマジックアイテムが卸される。
案内係は魔法大好きふりふりフリルときらきらブロンドツインテールがトレードマークのアルマ・クローディアン。
隣には魔術師組合局長の七尾陽介さん。握手をする彼の手は魔術師とは思えない分厚さと硬さ。
「サマーバケーションではたいへんお世話になりました。メタフィッシュのマジックアイテムの指南と、サメの魔獣討伐には本当に感謝の言葉しかありません。ところで、アラクネートくんはメリアローザの住人ではないのかな?」
「彼女はシャングリラの住人でして、こちらの世界とは別の住人ですねえ。彼女も面白い魔法を使うので、ぜひともお話しをうかがいたいところではありますが」
アラクネート・ウィルハート。【景色染め】なる魔法を使い、特殊な反物に景色をそのまま写し取るという素敵魔法の使い手。写真とはまた違った風合いで思い出を残す彼女の魔法技術は、アルマくんの理念と合致するところがある。
できればシャングリラの世界にも赴いて魔法技術を見学してみたいものだ。
そしてなにより、アラクネートくんもエリストリアくんも美女だ。異世界にはまだまだ出会ったことのない美女がいる。
楽しみだ。嗚呼楽しみだ。楽しみだ。
「サンジェルマンさん。思ってることが全部顔に書いてありますよ?」
「おっと失礼!」
アルマくんにすら読み取れるほど顔に出ていたか。いかんいかん。仕事に集中しなくては。




