異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 18
「いやぁ、素晴らしい景色だね。畑もそうだが、子供たちの瞳が生き生きとしている。将来、エルドラドはもっともっと素晴らしい場所になるだろう」
子供たちを見てそう言うと、バイくんは嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、本当に。ここに来た時は虚ろな目をしてたのに、まるで嘘のようですわ。全て暁の、太陽の少女の輝きに照らされたから。感謝の言葉もありません」
美しい白い毛並みを風になびかせるウェアフェイスのバイくんはつぶらな瞳をうるませた。ここは心の黄金に溢れる新緑の世界。平和な日常を謳歌する心と、なにがあっても彼らとの幸せな日々を守るという決意を感じる。
さて、と小さく区切って、本題のひとつめをバイくんに切り出そう。
「いずれ訪れるであろう異世界間交流について、暁くんはエルドラドを観光地として整備したいという話しだ。今日紹介された水晶鉱床と泥炭地の景色は素晴らしいものだった。あれはメリアローザに来たなら絶対に見ておきたい観光スポットになるだろう」
「暁もそう言ってはくれるけど、見に行くだけでお金を取れるもんなのかねぇ。私はそういうの詳しくないんだけど、異世界では土地を見るだけにお金を取るもんなのかい?」
「そうです。水晶鉱床への道中はエルドラドの方々が一生懸命に整備された場所なのでしょう? でしたら、貴方がたは観光料を徴収する権利があります」
「あれは華恋に言われて削っただけなんだが……。酒や食い物を売って商売をするってんなら理解できるんだが」
「発案者がエルドラド在住でなくても、水晶鉱床はエルドラドの財産ですよ。それに、世の中にはいろんな商売があります。観光業もそのひとつです。エルドラドでしかできない体験を売る。これはとても重要なことなんです。僕たちの世界ではエルドラドのような水晶鉱床はまずありません。マンモスもいません。なにより、体験をするということは、思い出を作るということです。これはその人の財産になるんですよ。子供たちを見てください。今読み聞かせてる本は多くの識者たちが集めた知識です。その知識を、彼らは楽しそうに聞いて、知って、楽しんでいる。彼らとともに過ごす貴女なら、体験すること、知ることの素晴らしさが理解できるはずです」
「…………なるほどねぇ」
楽しそうにする子供たちを見て、彼女も納得できたようだ。
本はいつか誰かの情熱を顕したもの。小さな情熱を体験して、次の誰かに引き継がれる。
それはとても大事な思い出になり、情熱となり、未来となる。
あぁー、僕も早くマンモスに乗たーい!




