異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 16
手渡された少女の情熱を耳に付け、鏡で自分の姿を覗き込む。
きらりと光るマリンブルー。混じりっけのない水色のアクアマリンが清廉な大人の色気を醸し出す。
「おぉ~……ワンポイントあるだけで印象が変わるなぁ。インヴィディアさんはどう思います?」
「とっても素敵だと思うわ。私もシンプルなものが好きな性格だから。あ、ちなみにこのネックレスは華恋ちゃんが私のために作ってくれたものなの。以前はアクセサリーなんて全然つけなかったんだけど、これはお気に入りで、毎日つけてるの」
「ネックレスだけ見ると大振りですけど、インヴィディアさんには不思議としっくりはまってますよね。華恋は本当にセンスがいいな」
「ありがとうございます。一般的な女性が身に着けるような細身のネックレスだと、どうしてもインヴィディアさん自身の覇気に負けてしまって。大振りの、一見すると大袈裟なデザインのほうが似合うんです。それでいて石は反射率の低く鮮やかな翡翠で、角をとって丸くして、インヴィディアさんらしい大らかで母性的なデザインに仕上げました」
「大らかで母性的だなんて、それは少し褒め過ぎよ? でもありがとう。本当に気に入ってるわ♪」
本当に仲いいなぁ。親子や歳の離れた姉妹のようだ。
華恋が選んでくれたピアスはインヴィディアさんからは好評。当の華恋はどう思ったのだろうか。
聞いてしまい、華恋の情熱スイッチがオンになった。思いのほか強く押しすぎたせいかボタンの戻りが悪くなって馬鹿になってしまったかもしれない。
「シンプルなマリンブルーもいいですけど、今度は反射率が高くなるようにカットした水色のジルコンをつけてみてください」
「おぉ~。これはまた、ギラギラしてらっしゃるな」
「ジルコンの屈折率は2.02とダイヤモンドに引けを取らないくらいの屈折率があります。それに複屈折という現象も持っていて、キラキラの輝きがより厚みを増すんです。ジルコンはダイヤモンド同様、カットの仕方次第では虹色に輝くファイアという現象がみられることがあるんです。世界最古の宝石と呼ばれるだけあって、古くから人々に愛された歴史があります。新約聖書にも登場するくらいですからね。あ、アパタイトも味があって素敵ですよ。透明感はジルコンやアクアマリンには劣るものの、鍾乳洞で見られる氷のような独特の肌感と、ゴツゴツしてるからこそ生み出せる幻想的な光の分散が見ていて飽きないネオンブルーを見せてくれるんです。それからですね、こちらのインディコライトは原石をそのまま削り出したものなんですけど、特徴的な縦筋が光に当たるとキラキラして――――――」
それから陽が落ちるまで、延々と華恋の宝石トークに付き合わされることになったのでした。




