異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 13
ランチが済んでティーパーティーも堪能して、さぁて本題のオーダーメイドウォッチの話し合いといこうじゃないか。
フェアリーのいる、セチアの工房の庭のガーデンテラスで!
「屋外で商談というのは初めてだが、これほどまでに景色がいいと新鮮でわくわくするな。さて、華恋がオーダーしたギベオンウォッチなんだけど」
「ご、ごくり……!」
固唾を呑むということは、自分が結構な無茶ぶりをしたことを自覚してるということか。
なんにしても、華恋が心配するようなことはひとつもない。
「ギベオンをベゼルやムーブメントに加工する分は問題ない。あとはデザインと、自然金についてだね。針と言っても形は千差万別。自然金を乗せるから少し幅を太くするか、根本から針先まで自然金を置くのか、ワンポイントに留めて変化をつけるのか、いろんなデザインとアイデアがあるからね」
「あぁ~~~~……よかったぁ~~~~……」
「断られると思った?」
「断られるのは、いつものことですから。でもどうしても、ステラの時計が欲しくて。でもやっぱり、だからこそ、こだわりたくて!」
「エクセレントッ! そういうところだよ。君を気に入ったのは!」
「ありがとうございますっ!」
華恋が元気な声で感謝とともに自分の行動を全肯定した。すると、一緒にいるインヴィディアさんが少し引いた。
「華恋ちゃん、貴女の情熱は憧れるけど、控えるところは控えめに、ね?」
「あっ、はい、気をつけます」
困ったような、楽しいような、インヴィディアさんはそんな表情を見せる。
華恋は誤魔化すように小さく笑って視線を逸らした。
この2人、仲いいなぁ。綺麗系美少女と美女が並ぶと絵面強すぎて眩しいわぁ~。
「さて、考える時間はたっぷりある。納得のいくものを選んでくれ。それと、ひとまずうちで作ってるスタンダードな手巻き式と自動巻きを持ってきたよ。シースルーバックだから、裏面を見るとムーブメントが丸見え。多分、華恋はこのタイプが好みなんじゃないかな?」
「シースルーバック! 絶対! 断然! これがいいです!」
「だと思ったよ。基本的にムーブメントの配置はこれの通りなんだけど、それは構わないかな?」
「……………………」
考え込み始めた。
これはまたなにかふっかけてくる予兆!
「これ、歯車の一部を水晶にするっていうのは?」
「できないこともないけど、さすがに経年劣化で破損するよ。いくらモース硬度7って言っても」
「ぐ、ぐぬぅ……………………」
それはさすがに無理だ。見てみたいけど。
ひとまず、ムーブメントはこちらが用意したものを使うということになった。追加でシースルーバックを採用。裏面をガラス張りにすることで、裏面からもムーブメントの動きを堪能できる贅沢仕様。
華恋にとってこれほど興奮を誘うアイテムはないだろう。
あとは自然金を使った針のデザインだけ。
シンプルに長細いだけのものにするか。なにかのモチーフを象った形にするか。この部分については、製造工程の最後の部分だから時間をかけてもらってかまわない。なんなら9割がた完成したあとに考えても遅くはない。
一生使いたくなる自分だけの時計。
それがステラ・フェッロの目指すものだから。




