異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 9
ローズマリーはスマホを中心にくるくる回る。
思い出を、今の楽しみを、出会いを大事にする彼女たちにとって、思い出を記録できる道具は喉から手が出るほどほしいのだろう。
多少の画素数を犠牲にすれば、フェアリーたちが使えるサイズのカメラができるかもしれない。これは異世界間交流が始まる前に作ってもらって、彼女たちにサプライズプレゼントだな。
お株爆上がり間違いなしっ!
でも今はフェアリーサイズのカメラがないので、できるだけのことをしよう。
「ごめんね。ローズマリーが使えるサイズのカメラはまだないの。でもあたしたちがいる間は写真が撮れるから、撮りたい時に声をかけてね。全員、カメラで写真が撮れるから」
「みんな持ってるの? わかった。その時になったらまたお願いするね」
「任せて! いつでも声をかけてね!」
なんならずっと一緒にいたいくらいですわ!
ここでアルマから悲しいお知らせが。
「写真を撮るのはいいんですけど、異世界間交流が始まるまで、フェアリーが写った写真は誰にも見せてはいけませんよ?」
「ぐっ……データ管理はきちんとしないと、外部にバレたらたいへんなことになるよね。人形か、ヴァーチャルアイドルってことで誤魔化せそうな気はするが」
「だとしたら、ミレナさんがそういう趣味があるってことになりますけど」
「それはヤバい。この歳で、あたしの性格で、少女趣味なんて知られたら死ねる」
少女趣味が嫌いというわけではない。かわいいものは大好きだ。だけど、キャラクターじゃないって言われて都合の悪いイメージを持たれる可能性大。それは困る。
データにロックかけとかなきゃ。でも疲れた時にはロックを外して眺めたい。ちょっとめんどくさそうだな。
だとしても、あたしは遠慮なく写真を撮る。
一瞬一瞬に喜び、楽しみ、笑顔でいられる時間はかけがえのないもの。
写真を見て、思い出して、また会いたいと思いたい。
いつかできるであろう我が子に見せて、『こんなに素敵な世界があるんだよ』って語って聞かせてあげたいな。
「あぁーーーー、結婚してぇーーーー」
「唐突ですねっ!」




