異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 4
聞くと、彼女はみるみるうちに顔を真っ赤にして思考停止。
青春してますな~♪
羨ましいですな~♪
あたしにもこんな青春があったらなー……。
いかんっ!
完全に墓穴を掘った!
彼女が機能停止してる間に話しを逸らそう!
「暁がスペシャルなスイーツを用意してるって言ってたけど、華恋はなにか知ってる?」
「いいえ、メルティさんとハーデンさんになにかを依頼したみたいです。2人のことなので、きっと間違いないスイーツが出てきますよっ!」
「間違いないスイーツか。それは楽しみだなー」
しかし、それが3時のティーパーティーならなおよかったのだが。
まさか朝食からスイーツとは恐れ入る。
しかしたまにはこんな日があってもよかろうなのだ。旅行に来てるんだから。非日常を味わわないでどうする。
年甲斐もなくそわそわする。と、さらなる非日常が現れた。
フェアリーたちが元気いっぱいな笑顔を見せてくれる。楽し気な声色を響かせて、思い思いに飛び回り、気になる人の前に着地した。
こともあろうか、バーニアがあたしのところへ来てくれた。
「おはよう、ミレナ! みんな! 一緒にご飯たべよっ!」
「もちろんっ!」
なんてことでしょう。彼女は数十人いる参加者の中からあたしを選んでくれた。
超嬉しいっ!
嬉しくってバーニアとハイタッチ。指の先っちょにバーニアのちっちゃいおててが触れる。小さくも喜びに満ちた衝撃が指先を伝って全身に広がった。なんて楽しそうな嬌声なのだ。一緒にいるだけで幸せになれる。
バーニアはあたしとハイタッチをして、隣にいる華恋、クラリス、ラクシュ、ラムともハイタッチ。今日の朝食はなんだろうと舞い踊る。
待ってましたの朝食がやってきた。まずは小さい子たちから。ラクシュとキィアくんの前にふっかふかのホットケーキが渡された。
ラクシュはこれを覗き込んでひと言。
「とってもいいにおいがする。おつきさまみたいにまんまるできいろくてきれい!」
メルティはフォークとナイフを握りしめ、お月様に飛び立とうとするラクシュを制して笑顔を向ける。
「まんまるお月様だけじゃないんだよ? 今日は暁さんからスペシャルなプレゼントがあるの。果物のコンポート。それから幻想神殿で採取された絶品はちみつ♪」
「「はちみつっ!」」
声が重なった。目の前のラクシュと、だいぶ遠いところから聞こえた。声の主はすぐに分かった。シェリー騎士団長だ。飛び上がり、メルティが用意したはちみつ壺を凝視して、星空の瞬きが如く瞳を輝かす大人がいる。




