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異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 56

 旅館【日輪館】最上階。貴族や王族も宿泊する超VIP部屋。

 メリアローザのパノラマが広がる。秋口の涼しい風に吹かれ、月と星の灯りに満ちた世界はまるで異世界の――――そうだった。ここは異世界でした。

 とにかく、本当に美しい景色なのです。空が澄みきってなければ見られない星の大運河。

 昼も夜も、きっと朝も、本当に素敵な表情を見せてくれる。

 アルマちゃんたちが心健やかに育つ理由が分かる気がした。


 テラス席で夜空を眺めてリラックス。するとアルマちゃんが湯呑に緑茶を淹れて持ってきてくれた。


「よろしければどうぞ。あつあつなので気を付けてくださいね」

「ありがとう。メリアローザも、エルドラドも、本当に素敵なところだね。明日はフラウウィードってところに行くんだよね。ハーブがたくさんあるっていう」


 ハーブという単語に、隣に座るクラリスさんがくいつく。


「インヴィディアさんから聞いただけなんだけど、ハーブを使ったハーブティーやスイーツがあるんですよね。お土産もたくさんあるとか。アルマさんの主観でいいので、どんなところなのか教えていただいてもよろしいでしょうか?」

「そうですね。見渡す限り、ハーブの園です。風が緑色をしていて、とっても清々しい気持ちになります。そのせいか、朝の冷えた空気と、昼間の温かな空気とでは風の香りが違う気がします。特に面白いのが、雨の日に美しく感じる景観作りをしたところでしょうか。フラウウィードは時折、小雨が降るんですが、幻想的というか、ロマンチックというか、ウッドデッキと魔力灯の灯りでなんともいえないファンタスティックな表情を見せてくれるんです」

「緑色の風!」

「幻想的な雨の日の景色!」


 想像しただけで胸が高鳴る!

 早く行きたい、フラウウィード!


 きゃいきゃいするわたしたちを見つけたニャニャとリリィも話しにくわわる。

 彼女たちも異世界の体験にどきどきした。これからもっともっと素敵な出会いがあるのかと思うと、わくわくでなかなか眠気がこない。


「フラウウィードににゃんこはいるです?」

「猫はいないですね。鶏がいます。鶏の卵を使った絶品スイーツがありますっ!」

「「「「おぉ~っ!」」」」

「フラウウィードはハーブの楽園ってバーニアたちが言ってましたが、どんなハーブがあるのですか?」

「ハーブティーに使うものからお肉の臭み抜きのハーブまで、本当にいろんな種類があるよ。交雑が激しいから、ひと月で新しいハーブが生まれたりして、まさにハーブの楽園にふさわしい場所だね」

「「「「おぉ~っ!」」」」


 ああ、どうしよう。

 もっともっと聞いていたい。

 だけどあんまりわくわくすると本当に眠れなくなる。

 ここは我慢だ、ベレッタ・シルヴィア。

 好奇心を理性で抑え、ふかふかの布団の中へ潜りこもう。

 かけがえのない体験を胸に素敵な夢を見よう。

 明日はもっときらきらな朝になると信じてっ!


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