異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 53
「ラクシュミーちゃん、これからお風呂上りのあまぁ~いジュースを作るよ。ほら、起きて起きて♪」
「あまいじゅーす!」
一瞬で起き上がった。
きょろきょろとあたりを見渡して目当ての宝物を探す。
一階にあるから手を繋いで歩こう。と思ったら、ラクシュミーちゃんが大好きなラムさんに少女の手を奪われてしまった。ラクシュミーちゃんもまんざらでないからよしとしよう。
少女の魂の叫びに呼応した少年少女が起き上がる。今度こそ、今度こそ期待は叶えられる。
机には加速術式で抽出されたバニラビーンズ入りの甘水とカラフルなパッケージのアロマボトルが並ぶ。
なにが始まるのか。
どんな景色が描かれるのか。
わくわくが止まらない子供たちはまだかまだかと待ち構える。
わたしはたくさんのコップと子供たちを前に、ぱたむと手を閉じて注目を集めた。
「それでは、フェアリーたちが作ってくれたアロマオイルと、セチアさんたちが丹精込めて作ってくれたバニラビーンズでバニラウォーターを使ったフラワーティーを作るよ。バニラウォーターをコップに注ぐから、みんなは好きなアロマボトルを選んでね♪」
すると子供たちは一斉に好みのアロマボトルを選び抜く。
見たこともない花が描かれたパッケージ。嗅いだことのない素敵な香り。
酔いしれて、不貞腐れたことなど忘れて楽しい時間に思いを馳せる。
ガラスコップにカラフルな色が咲く。
赤、青、黄、緑、紫、白、黒。魔力灯の光を受けてきらりきらりと光り輝く。
子供たちは自分の好きな色を選んで手に取った。
大人たちも子供たちに倣い、ガラスコップを掲げて光を通す。
全員にフラワーティーが行き届いたところで音頭をとろう。
「それでは、みなみな様の日常がよりいっそう、素敵なものになると願って、乾杯っ!」
「「「「「「「「「乾杯っ!」」」」」」」」」」
ごくっ、ごくっ、ごくっ、ぷはーっ!
おいしいっ!
バニラウォーターの優しくも芳醇な甘さと、アロマオイルの鮮烈な香りと味が心を満たしてくれる。
色も、香りも、味も抜群。グレンツェンでも売れるのではっ!?
フェアリーが作ったとなればなおさら売り切れ必至。異世界間交流が始まったら提案しよう。
子供たちも初めての体験にどきどきが止まらない。
いっきに飲み干して、ぷはーっと言って瞳をきらきらと輝かせる。とてもいい笑顔だ。わたしまで癒される。楽しくなっちゃう。嬉しくなっちゃう。
おかわりを要求されてガラスコップにバニラウォーターを注ぐ。
次は何色にしようか、どんな味になるのか、二つ三つと足したらどんな感動があるのだろう。
眠気も忘れて楽しい時間に心を揺らす。
子供も大人も関係ない。新しい発見を楽しむ時は、誰だって童心に帰るのだ。




