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異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 45

 一番肥とは。最も若い肥溜めのことである。肥溜めとはつまり、野菜を作るための肥料を作る、屎尿(しにょう)を溜めた設備のこと。

 一番の肥溜めは全ての屎尿を溜めておく場所。

 続く二番は水はけのよい土地、水持ちのよい土地の二種類に分けられた瓶の中の屎尿のこと。本来は3年かけて発酵させるが、エルドラドでは加速術式を用い、約1か月で発酵させる。

 その際、水はけのよい土地用の瓶には途中でマンモスの糞を混ぜる。マンモスの胃の中で熟成発酵された糞を混ぜることで、よりよい肥料になるのだそう。

 最後は水を混ぜて使いやすくした液体肥料として畑に撒いたり、土に肥料を置き、その上に藁を被せて使われる。


 我々の常識では、衛生的に安全な人工肥料が用いられた。

 科学技術の少ないエルドラドではもちろん、メリアローザもこうした天然肥料を用いて作物が育てられる。


 少し話しがそれた。まぁ要するに、暁さんの言葉通りなら、彼らはフレッシュなシットの中にぶち込まれるということである。

 想像しただけで身の毛がよだつ……。


 閑話休題。というより、想像したくないのでこの話題はよしておこう。食事の席だし。

 酔い潰れた人から目を逸らしてサンジェルマンさんに向き合おう。


「と、ところで、今はなんのお話しをされていたんですか?」

「エルドラドがどんなところかということと、時間があったら手合わせして欲しいと頼まれたところなんだ」

「へぇ~……えっ、手合わせですか!?」


 不意にライラさんの話しが脳裏をよぎる。

 彼女は暁さんに無断で魔物退治に出向き、出禁を受けた。つまり、そういう、なんていうか、戦闘が絡む話しは避けたほうがよいのでは?

 無骨に心配が顔に出たわたしの気持ちをサンジェルマンさんは察する。


「大丈夫だよ。僕は強いからねっ!」


 そういう問題ではないと思うんですが……。

 これ、暁さんが聞いたら呆れる案件では?


 さらなる心配を顔に表したわたしに、サンジェルマンさんはどこ吹く風と言った様子で笑い飛ばす。


「それにこれはメリアローザの戦力がどんなものなのかを知るいい機会だ。知っておいて損はない。それに、こちらの世界は魔法技術に長ける。特に魔剣の性能には目を見張るものがある。冒険者と魔剣の力を知るには、直に戦うのが一番なんだ。異世界間同盟が前提だからね。ある程度はお互いの手の内を見せあわなくちゃ。だよね、暁くん」


 呼ばれ、視界の外、シャルロッテ姫様とリリス姫様の背後に忍び寄る暁さんを名指しした。

 彼女はサンジェルマンさんと対峙する形で座し、リリス姫の隣に座る。


「ええ、友好関係を築くつもりですし、それができる相手だと信頼してます。だけどまぁ、大人の世界は綺麗ごとばかりじゃ立ち行かぬのだよ、ベレッタ。そこは理解できるかな?」

「はい。綺麗ごとだけで世渡りできるほど、世界が甘くないのは理解してるつもりです」


 ユノさんの仕事を手伝いながら感じた。協力関係にあっても、自国の利益のためになにをするべきかを考える。

 お互いがウィンウィンになれるならいい。だけど、中には自分さえよければそれでいいという人もいた。だから龍脈の研究に於いて、ベルンがイニシアチブを握ってて本当に良かったと思う。


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