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異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 44

 華恋はさっそく、ライブラから紙とインクを取り出した。善は急げと言わんばかりの行動力。


 こうなったら宴会が終わっても話しこむだろう。

 巻き込まれない内に退散だっ!


 向かいたい場所は決まってる。太陽の女性。暁さんに改めて、面と向かってお礼が言いたい。

 異世界に、メリアローザに招待してくれてありがとう。

 エルドラドに招待してくれてありがとう。

 フェアリーと出会わせてくれてありがとう。

 アルマちゃんと出会わせてくれてありがとう。

 たくさんのありがとうを伝えたい。

 と、思ったのだけど、暁さんはヘラさんと一緒に、子供たちに絵本の読み聞かせの真っ最中。好奇心旺盛な子供たちに、ヘラさんは決まって図鑑をプレゼントするみたい。

 前回は鳥や魚の図鑑。今回はキノコや自然現象、世界の道具図鑑など、面白くてためになるものを用意した。


 うぅむ、あちらは人数が飽和してしまってる。横から水を差すのもよくないか。

 義兄ちゃんはレオさんと魔導工学の話しで盛り上がる。レオさんの武器は魔力を弾丸に変えて打ち出す魔銃。わたしには縁遠い世界の話し。

 ほかに取り付けそうな島は――――。


 異世界渡航組の末席にサンジェルマンさんとエルドラドの住人の何人かが話し込んでる。サンジェルマンさんはエルドラドの視察も仕事のひとつ。現地人から話しを聞いてるに違いない。

 わたしもエルドラドのことを知りたい。というわけで、サンジェルマンさんにお酒を乗せた膳を持って隣へ行こう。


 するとどうだろう。サンジェルマンさんと面と向き合う人は人だけじゃない。獣人と、こめかみから角を生やした人がいる。しかもめちゃくちゃ顔が怖い。鬼みたいに怖い。

 でも配膳途中で方向転換するのは失礼極まりない。目も合っちゃったし……。

 意を決して前へ進む。と、わたしより先にアルマちゃんが駆け足した。サンジェルマンさんのところにと思ったら、なんと鬼人のところにだった。


「お久しぶりです、ノイマンさん。ドラゴンの首を綺麗に一刀両断してくださったので、剥製を作る時にとても綺麗に接合できたそうです。実に見事な切り口で。ささっ、よろしければ一献いかがでしょう」


 わたしが持ってきた膳からとっくりを持ち、ノイマンと呼んだ彼に勧める。

 鬼人はこれを聞いて上機嫌になり、笑顔を作ってお猪口を取った。


「そうかそうか、それはよかった。小生の刀がどんな形であれ、誰かの役に立てたなら本望よ」


 めっちゃいい人だった!

 人は見かけによらないという。まさにその典型例。第一印象で怖がってしまってごめんなさい。


 ドラゴン。ウララの占いのままに、おそらく世界初であろうドラゴンライダーになることを義務付けられてしまった。

 いや、決して嫌なわけではない。むしろ嬉しい。アルマちゃんと一緒にいられるし。ドラゴンに乗って空を飛びたいと思わなかったことがないわけじゃない。

 でもまさか現実にその時が来るとなると、緊張でそわそわしちゃいます。


 ドラゴンの背中に乗る自分の姿を脳裏の片隅に置いて、サンジェルマンさんに話しを振ろう。


「サンジェルマンさんはシェリーさんたちと同様、エルドラドの視察も仕事なんですよね。以前、ライラさんたちも視察されたということですが、ダブルチェックということで。まだ数時間ですが、エルドラドはいかがですか?」


 聞くと、彼は笑顔を作って頷いた。


「結論を出すには、彼らの仕事ぶりや生活環境を具体的に見てからになるけど、今のところは全く問題ないと思うよ。エルドラドの住人は元奴隷。それが引き継がれて強制労働されてないかってことだったけど、子供も大人もいい顔をする」

「わたしもそう思います。印象的だったのは、酔いつぶれて迷惑をかけたら、一番肥? というところに連れて行くと行った時の返事が、強制的に主従関係を結ばれてる人の態度じゃなかったことです。演技の可能性もありますが、彼らの様子を見る限り、多分それはないかと思いました」


 きっとそういう、取り繕うとか無理な人種と思われる。素直で実直がゆえに、無理をしたところで嫌なことはどこか態度に出る。そういう素直でまっすぐな人柄が見てとれる。

 獣人は人間の奴隷だったということだけど、ここでは肩を組んで酔い潰れて…………こ、これは、一番肥行きなのでは!?


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