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異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 37

 200人近い人数が入って余りある大食堂。

 天井は高く、大聖堂と同じくらい。

 格天井には太陽のギルドが運営する食堂や旅館と同じく、豪華な花の絵が描かれる。

 格式高く、荘厳で美しく、神秘的な雰囲気の空間は神殿のように静謐な空気を纏う。

 ここが宴会場になって、飲んで食べて騒いでも、どこか儀式的な美しさが残る。誠実で、謙虚で、大事な時には大胆になる暁さんの懐の中みたい。


 畳みが敷き詰められた床にあぐらをかいて座る。

 とんでもなく違和感があった。ピクニックならともかく、部屋の中で、それも食事時にあぐらをかくなんて生まれて初めての経験。なんだかすごく緊張する。

 わたしたち異世界組は専用に用意された膳を勧められた。現地民の人々は長机。お尻の下には茣蓙。対して、我々は厚みのある刺繍入りの座布団。明らかに対応が違う。なんかちょっと気まずい。

 ちなみに、メリアローザに住む華恋やアルマちゃんも長机に茣蓙のエリアにいる。つまりアルマちゃんが遠くに行ってしまった。

 旅行仲間に話しができる人がいないわけじゃないけど、できれば隣にいてほしかったっ!


 ちょびっとしょんぼりするわたしの心を知ってか知らずか、アルマちゃんが振り向きざまに笑顔で袖を振ってくれる。わたしも小さく笑って手を振った。

 できればわたしもそっちに行きたい。本音を押し殺して心の中でため息をつく。


 かしこまった場に慣れないわたしはそわそわ。

 シェリーさんやサンジェルマンさんはさすがと言うべきか、物怖じするどころか楽しそうに笑顔を浮かべる。でもなぜか、サンジェルマンさんは下座にいた。

 ニャニャとリリィは緊張よりわくわくが勝る。床に天井に柱の彫刻に、見たこともない景色に胸を高鳴らせた。

 お姫様も、レオさんも、インヴィディアさんも堂々としたもの。唯一、クラリスさんだけは緊張して身を縮こませる。仲間がいるとほっとします。


 しかし、話しかけようにも膳を挟んで右斜め3つ先。あまりにも遠すぎる。

 緊張すると言えばそう、なぜか分からないけどわたしの隣にスカサハさんが座った。

 すごく素敵な女性だというのは分かる。だけど、どうしてわたしの隣なんだろう。インヴィディアさんは対面の、それも斜め右側にいるのに。


 不思議に思うも束の間、上座に立った暁さんが自然な流れで言葉を発する。

 大きく、温かく、優しい声がみんなの心に広がった。


「今日は異世界より、遠いかの地よりあたしの友人がお越しになりました。我々とは違う世界で、違う土地で、違う価値観を持つ人々です。エルドラドもそう、海を越えた大陸より遥々の来訪は奇跡の連続だったでしょう。当然、過去には辛いこともあったでしょう。涙を呑む日もあったでしょう。しかし、あたしたちはこうして手を取り合い、心を通わせ合うことができます。少なくともあたしはそう感じてるし、信じてる。そうであってほしいと切に願ってる。これからもエルドラドが、多くの人々にとって幸福の地であり続けられるよう尽力します。ですが、あたし一人の力では限界がある。だから、これからもどうか、みんなの力をかしてほしい。手を取り合い、助け合い、共に成長していきましょう。さて、少し長くなりましたが口上はこのへんで。それでは、グレンツェンとベルン、聖アルスノート、メドラウト、エルドレーヌ、エルドラド、メリアローザの益々の発展を願いまして、乾杯ッ!」

「「「「「「「「「乾杯ッ!」」」」」」」」」」


 口上の間に配られたお猪口を手に取り、掲げ、口に含む。

 呑み切って、盛大な拍手が巻き起こった。不意にみんなの顔を見ると、みんな本当にいい笑顔で暁さんを讃えるのだ。

 元奴隷と聞いてたけど、まるでそんな雰囲気はない。

 自由に、のびのびと、生き生きと生きてるような、そんな印象しか抱かない。


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