異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 36
化石という単語を聞いて、ヘラさんがスカサハさんの前に踊り出る。
「化石っていうのは、長い年月を経て生物の死骸が鉱石に置換されたり、空洞に鉱石が充填されて化石化して鉱物に変化することを言うの!」
「生物の死骸が鉱石になる!? そ、そんな恐ろしい魔法があるんですか!?」
知らないとこういう反応になるのか……。
スカサハさんは化石のことを禁術か、それに近い何かと誤解してしまった。この驚きようから察するに、人間が石化するんじゃないかって思ってるみたい。
開いた口が塞がらないスカサハさんの肩にインヴィディアさんの手が乗る。
「長い時間を経て、って言ってるでしょ? これは魔法じゃなくて時間経過による自然現象よ。落ち着きなさい。ごめんなさいね。知らないと驚くことばかりで」
「いいえ。こちらこそ興奮してしまってごめんなさい。あ、それと、エルドラドの水晶鉱床の道中にアンモナイトの化石が見られるから、あとで一緒に行って実物を見てみましょう」
「実物……実際にこの目で見てみたいです」
と、好奇心を刺激されたスカサハさんであったが、暁さんから少し残念なお知らせがある。
「すまないが今日はもうやめておいたほうがいい。行って帰ってくる頃には陽が落ちる。また明日以降の楽しみにしよう。安心してくれ。化石っていうのは害意があるものじゃないから」
「それなら、いいんですが」
心配するスカサハさんを安心させるためか、自慢の品を見せびらかしたいのか、華恋はライブラからアンモライトのペンダントを取り出した。
「ちなみに、こちらがアンモナイトの化石を加工して作ったペンダントです。遊色効果がよく出ていて綺麗でしょ? 層の厚みによって色味が変わってくるので、薄いところと厚いところと緩急をつけて研磨してもらったんです。生物由来の構造色なので、同じものがひとつとしてないところも魅力的なんですよ!」
「か、華恋も相変わらずのようでなによりだ。化石が素敵なものだということはよくわかったよ。ありがとう」
「まだ説明し足りたいことが!」
「すまないがそれはあとにしてくれ……」
アルマちゃんに似たところがある。好きなことに一直線。話し始めると止まらない。
それだけ好きなことがあるって、本当に素敵なことだと思う。羨ましいとすら思った。
傍らで、華恋を見たアルマちゃんがぽつりとつぶやいた。
「いやー、華恋さんも好き者ですよねー」
それ貴女が言うッ!?
誰もが思い、硬直して言葉に出せなかった。




