異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 33
こちら側の挨拶を終えると、宴の準備に勤しむ屈強な男性たちが現れた。暁さんを見て、笑顔で手を振る。
「よぉーう! 暁とご友人さんたち。今日は宴だ。めいいっぱい飲んで騒いで行ってくれや!」
「酒も飯もたらふく用意したからな! このあと、漁に出たやつらも帰ってくる。楽しみにしといてくれや!」
意気揚々の大人たちに暁さんは一喝を入れる。
「お前ら、酔って客人に迷惑かけんなよ。酔い潰れたら一番肥に叩き込むぞ!?」
「「へーい」」
暁さんは生返事を睨んで一瞥。
リンさんは身を縮ませて暁さんに謝罪する。
「す、すみませんっ。飲み過ぎないように伝えておきますので、どうか一番肥だけは勘弁してあげてください」
「ぐぬぅ……まぁ、調子に乗って食材を使いすぎないようにしてくれればそれでいい。冬備え分と日々の食料の配分に気を付けてくれ」
「もちろんです。宴会に使いすぎて毎日のご飯がおろそかになってはいけませんから」
「分かってるならそれでいい。不足すればメリアローザやダンジョンから供給も可能だが、限度はあるからな。でも無理はするな。足りなくなったら足りなくなったと伝えてくれ。死ぬことだけは許さない」
「はいっ。ありがとうございますっ!」
死ぬことだけは許さない。
なんて力強くて、優しい言葉だろう。
改めて暁さんに惚れてしまいます。
リンさんは声を震わせて、暁さんに感謝の言葉を贈った。
太陽の女性を前に、クラリスさんが感涙。
「インヴィディアさんとスカサハさんから聞いてはいましたが、暁さん、かっこいいです……っ!」
スカサハさんも笑顔でつぶやく。
「相変わらず、恋焦がれるほどに眩しい太陽です」
インヴィディアさんは頬を紅潮させて感動に打ち震えた。
「さすが暁ちゃん。憧れるわぁ~♪」
「インヴィディアさんに憧れてもらえて光栄です。さて、新設した養殖場を見ていただきましょう。リン、よろしく頼む」
話しがひと段落したところで、リンさんにエルドラドの案内を促した。まず最初に養殖場の見学。グレンツェンとベルンからの異世界渡航組は2か月前に見学した。
今回はインヴィディアさんたちに説明するのにくわえ、新しい生簀を作ったということで再度見学です。
わたしは初めてなのでわくわくしてます。異世界の魔法技術の一端が見られる。魔法研究職として、これほど楽しいことはありません。




