異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 31
エルドラドに転移して見えた景色は緑の畑と、人々の営み、遠くにはマンモスがいる。
自然、人、動物。それら全てが溶け合う世界はわたしたちの常識にはない景色を描きだす。と同時に、どこか懐かしいようにも思えた。
路面電車の窓から見るカントリーロードのような既視感がある。
どこか懐かしくて心安らぐ。そんな風景がここにはある。
緑と土の香りを体いっぱいに吸い込めば、緩やかに流れる風になれた気がした。
「本当にのどかで素敵な景色だね。彼らがこの土地を、エルドラドを大事にしてるってひと目見て分かるよ」
アルマちゃんに言うと、彼女は誇らしげな笑顔を返してくれる。
「エルドラドに住む人たちは本当に素敵な人たちばかりです。魔鉱石のほとんどがエルドラドで見つかります。宝石も産出されますし、龍脈の流れが太いので上質なマジックアイテムの素材も作ってもらってるんです♪」
「さすがアルマちゃん。こんな時にも魔法が一番なんだね」
「そ、それだけじゃないんですよっ。土も山も、海も川も湖沼も自然の恵みで溢れてます。こーんな大粒のあさりだって採れたんです。きっともっといろんな食材が眠ってるにちがいありませんっ!」
魔法の次は食べ物の話題。さすがアルマちゃん。こんな時にもブレない姿が素敵だよっ!
そう伝えると、アルマちゃんは褒められた気がしてにやけ顔を見せてくれた。
暁さんは大きく笑ってアルマちゃんの頭を撫でてあげる。
「アルマの言う通り、魔法技術のための素材も、食材も豊富なところだ。とはいえ、農耕についてはこれからだし、先月、新しい住人が移住してくれたから、彼らの心のケアとサポートが今の課題かな。ベレッタはプライベートでの旅行ということなんだが、できれば彼らの暮らしぶりを見て行ってほしい。聞いてるだろうが、ここの住人は過去に心の傷を負った者たちばかりだ。どうかみなさん、優しくしてあげてください」
暁さんはぺこりと大きく腰を折った。
特に視察第二弾のサンジェルマンさんとレオさんは気を引き締める。
宝石魔法のための宝石が採掘されるエルドラド。奴隷の強制労働はあってはならない。
ライラさんとシェリーさんが先入りしたとはいえ、ダブルチェックは必要である。
特にサンジェルマンさんはハイラックス国際友軍時代から現地民の本音を聞き出して、本当に必要なことはなにか、彼らがどういう状況なのかを知る術を持つ。
サンジェルマンさんが問題無しと言ってくれれば、暁さんも安心できる。




