異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 30
そうだ。彼女はサマーバケーションの時に意中の相手に告白するも断られてしまったのだ。
だけどすみれはイラさんのことが諦めきれないという。イラさんもイラさんで腕を組む隙はありそうな態度。
彼女の恋路はどうなってしまうのか。
どうなってしまうのですかっ!
恋バナ大好きな女子を筆頭に全員がウララの言葉に注目する。
「すみれさんの恋の成就はこれからなので、まだ焦る必要はないと思いますよ?」
「「「「「おぉーっ!」」」」」
彼女には幸せになってほしい。彼女の料理で幸せになった人たちはみな、心の底から切実に想う。
我々の感嘆のため息のあと、ウララが助言を与える。
「すみれさんの秘密を片思いの男性が知ることで、なんやかんや大変なことが起きて急転直下の勢いで恋が実りますっ! なので、必ずスターガーネットのペンダントは肌身離さず身に着けておいてください! 絶対ですよ!」
「「「「「おおおッ!?」」」」」
断定されたっ!
イラさんとすみれが結ばれる未来が確定した!
これは祝わずにはいられない。でもでも、まだ未来のことは分からないわけで。肝心のすみれの秘密をイラさんに教えないといけない。
このハードルさえクリアすれば、すみれは意中の相手と結ばれる!
協力したい。恋の支柱になってあげたい。だけど、すみれの秘密というのがネック。おいそれと聞けるものではない。
不意にすみれの顔を見る。と、彼女は困った様子で体を右に左に傾けた。
「私の秘密……秘密……う~ん…………」
本人に心当たりがない!?
これではイラさんに恋心が伝わらないではないか!
なんとか思い出して。心当たりを探りあててっ!
「はっ! もしかして!」
「「「「「もしかしてっ!?」」」」」
「私が…………赤色が大好きだということ!?」
「「「「「それはみんな知ってる」」」」」
周知の事実である。秘密でもなんでもない。
困ったな。これではすみれの幸せがひとつ潰えてしまうっ!
周囲はわたわた。本人は呆然。
恋の行方が気になるも、暁さんはじっくり考えればいいとすみれの頭を撫でようとした。撫でようとして、脊髄反射的に撥ね退けられた。
「あっ、すみません。おでこに触られるのが嫌なんです」
「――――もしかして、秘密ってこれのことでは?」
生理的な反応だから仕方ない。とは分かっていても、好意を持つ人に拒否されるのは心が痛むものである。
暁さんはしょんぼりする心を慰めて、わたしたちをエルドラドへ招待した。




