異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 27
ドラゴンが常識の外にある人たちは呆然と立ち尽くした。常識の中にある人は驚くほど冷静に会話を続ける。
暁さんは、それならばと、アルマちゃんの肩を叩いて彼女を推薦した。
「それでしたらアルマはどうでしょう。ドラゴンと対峙したことがありますし、魔法の扱いも熟達してます。ドラゴンを操って空を飛ぶのもわけないでしょう。万一、空で事故って落ちても、彼女ならフォローできると思いますよ」
「アルマにお任せくださいなっ♪」
「分かった。アルマちゃんに任せちゃう♪」
「ありがたき幸せっ!」
ここで横槍を入れる人が現れた。レオさんだ。
「魔法の練度だったら俺だって負けてないっすよ! むしろベルン主催のモンスターカーレースなら、騎士団員の誰かがやるべきなんじゃないでしょうかっ! ウララちゃんは俺とアルマちゃんと、どっちが適任だと思う!?」
十中八九、ドラゴンに乗りたいだけ。瞳がすごくきらきらしてる。ビームが出そうなほどに。
さて、占いの結果は?
ウララが答えを見るより先に、シェリーさんから残念なお知らせが。
「適任とか以前に、レオさんってその日、お仕事があるのでは?」
「あッ!」
本当に適任とかそういう次元の話しじゃなかった。
それでもドラゴン大好き大人少年は諦めない。
「これも仕事になるしっ! 調整すればなんとかっ!」
難しい顔をするレオさんの言葉をシェリーさんが一刀両断。
「レオさんは今回、警邏隊と警察の調整役です。代役は立てられません」
「サンジェルマンさんは」
「僕は国王様直近の警護隊隊長だから代打はできないよ。つきっきりだからね。そもそも僕もドラゴンに乗りたい」
ですよね。
それでもレオさんは諦めない。サンジェルマンさんに言葉を投げる。
「ライラさんは?」
「彼女にチームプレーができたら、僕の苦労がだいぶ減ってるかなぁ」
「おじいちゃんは!」
「エイリオス氏こそ、なにを置き去りにしてもドラゴンに乗るって言うと思うよ。国王様の護衛もすっぽかすと思う。あと、彼に事務的な仕事は無理」
「兄貴は!?」
「真面目なメイガスくんがそれを聞いたらキレるでしょ」
「エレノアさんは……無理か…………」
「お祭りごとがある時は基本、救急医療センターに缶詰だからね。それに、彼女もドラゴン乗りたい派だと思う」
轟沈!
「俺の適正があって調整役を充てられたわけだけど、今日ほど己の才能が憎いと思ったことはない…………ッ!」
「最後の最後にその言葉が出てくるところ、さすがレオくんだなぁ。頼りにしてるよ」
どうあってもポジティブ。それがレオさんのいいところ。
それにしても、まさかわたしの未来にドラゴンに騎乗する日が来るとは思わなかった。
だけどアルマちゃんと一緒に訓練できるのだろう。それはとっても楽しみだ♪




