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異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 25

 950年。突拍子もない冗談かと思った。だけど、暁さんもアルマちゃんも、スカサハさんもクラリスさんも驚いた様子はない。

 なにを隠そうインヴィディアさんは悪魔である。メリアローザのある世界には悪魔もいれば天使もいる。魔族も、獣人も、魔人も、吸血鬼も、アンデットも、そして不死人も……。


 キッチン・グレンツェッタ前祝で紹介された彼女たちの肩書は肩書じゃなかった。あろうことか事実。つまり、暁さんは不死で、セチアさんは魔人。リィリィちゃんは吸血姫。それもデイウォーカー。


 驚きを隠さない異世界旅行初体験組を前に、アルマちゃんはあっけらかんとした表情を見せた。


「フェアリーがいるんだから、なんでもアリでは?」


 そういう問題なの?

 とは言葉にならなかった。

 だってセチアさんも、暁さんも、悪魔のインヴィディアさんも、本当にいい人なんだもん。

 ヘラさんが言った。大事なのはその人がどういう人かということ。

 わたしはその言葉を大事にしたいと思います。


 ♪ ♪ ♪


 ダンジョン【薔薇の塔】のエントランスに戻ってきた一同の前にローブを着た少女と華恋の姿があった。

 華恋はインヴィディアさんを見るなり駆け寄って恋する乙女のような表情になる。彼女にとってインヴィディアさんは理想の女性。強くて優しくて、かっこいい。目指すべき目標であり憧れ。

 華恋の気持ちはよくわかる。関わって数十分だけど、嫉妬(憧憬)の悪魔が本当に素敵な女性だということが分かったから。


「お久しぶりです、インヴィディアさん。スカサハさん。そちらの方は初めましてですよね?」


 笑顔を向けて、インヴィディアさんが自慢の義娘を紹介する。


「クラリス・メドラウトと言うの。血は繋がってないけど、私の義娘だから、仲良くしてもらえると嬉しいわ」

「もちろんですっ! よろしくお願いしますっ!」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 クラリスさんは小さくお辞儀をして笑顔を作る。

 華恋もそれに応え、それでは、と切り出した。


「ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、初めましての方もいるので説明します。エルドラドへ赴く前にウララの占いを受けて、エルドラドへ入っても問題ないかを確認します。ウララの許可が下りたのち、武器をひとつ残して、残り全ての武器の一時預かりをいたします。解放されたとはいえ、エルドラドは元奴隷の人々が住まう黄金郷。どうかお察しいただきますよう、お願いいたします」


 うやうやしく首を垂れて背筋を伸ばす。今の華恋の顔は恋する乙女のそれではない。真剣に誰かを想う人の顔だ。

 全員が快諾したのち、まずは占いをしてもらう。なんだかどきどきしちゃうな。恋占いをするわけでもないのに、無性に心がざわめくのはなぜでしょう。

 占いという単語にそわそわする年頃なんです。

 どきどきとそわそわとわくわくを携えて順番を待つ。そわそわ。


 ウララさんは最初に見知った顔を見渡してひと言。


「いつものメンツはオッケー♪」


 一括処理された。あまりにも味気なさすぎる。これはすごく嫌だ。

 続いてスカサハさんとインヴィディアさんの占いの結果が言い渡される。


「お久しぶりです、インヴィディアさん、スカサハさん。お二人にとって、エルドラドの訪問はとても素晴らしい体験になると思いますので、存分に楽しんで行ってください」

「ありがとう。ウララも元気そうでなによりだ」

「ええ、教育者の端くれとして、国を預かる者として、たくさん学ばせてもらうつもりよ」


 さっきよりは内容がある。しかしどこか淡泊だ。

 理由は次に視るクラリスさんで明かされる。


「クラリスさん、ですよね。片思いの相手がいらっしゃるのですね。後日、華恋に相談してペアのネックレスを作ってもらってください。きっと役に立ちますよ♪」

「なっ、なんで片思いの相手がいると!? さっきの話しを誰かから聞いたんですか?」

「さっきの話し? すみません。どうやらもっと時間があれば恋バナできたんですが。今日はエルドラドで宴会ということで、少し巻きでお願いされたんです」


 そういう理由で割愛されてたんだ。よかった。適当なことを言ってるんじゃないんだ。


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