お金よりも大事なもの
お金よりも大事な物はひとそれぞれあると思います。
命よりお金が大事っていう人もおろうかと思います。
以下、主観【アルマ・クローディアン】
モツ野菜炒め、ウマーーーーーーーーーイッ!
モツ煮込み、ウマーーーーーーーーーイッ!
かき氷、ウマーーーーーーーーーイッ!
グラタン、ウマーーーーーーーーーイッ!
ラザニア、ウマーーーーーーーーーイッ!
ふわぁ~。なんでもおいしい。
お酒がウマい。
みんなで食べ比べて楽しい。最高。幸せだぁーッ!
あぁ~もう~このまま寝たい。今日はいい夢が見れそうだ。
暁さんにいい子いい子してもらって、セチアさんに素敵なお土産をもらって、リィリィちゃんとも久々に会えたし、アルマが提案した肉体強化回転三連式をゴードンが使えそうだって言ってたし、世はまさに春爛漫。
あとは空中散歩を成功させればよきかなよきかな。
え~っと、屋外で展開するために必要な結界の道具はシェリーさんが調達してくれるって言ってたので、それが届いてから試験再開かな。
あとは男連中の魔力の練度を上げさせること。万一のために2人で3日間を凌げるくらいに調練しておくくらいでしょう。
朝が早いから遅刻しないように気をつけないとな。ふふふのふ。なかなかに順調じゃないですか。
ほろ酔い気分に任せてにやにやと笑顔を浮かべてると、どこからともなくアルマの名前を呼ぶ声が聞こえた。聞き覚えのない声だ。誰だろう。
「こんにちはぁ。あなーたが空中散歩のリーダーのアルマちゃんねぃ。アターシはデイビッド・ガーベイン。面白いものを探して世界中を飛び回ってるのョ。今日はエキュルイュの新作家具と空中散歩の商談に来たのん。アポ無しなんだけど、お話しいいかしらぁん?」
映画CHICAG●に出てきそうなショーマンの恰好を普段着で来ている双子あごのおじ……お兄さん (?)が現れた。☆型の伊達眼鏡が特徴的な細マッチョ。
普段着もキンギンギラギラしてる。どっからどう見ても変な人。
暁さんを筆頭に、凄い人には変わり者が多いと言うが、この人は見た目から変人。
ショーマンのお仕事は世界中に散らばる凄い商品を取り扱い、世に送り出すバイヤー。
その彼が言うところによると、アルマが作りだした空中散歩の使用権を買い取り、世界中のイベントやショーで扱いたいというのだ。
アルマの夢は魔法でたくさんの人を笑顔にすること。
今回の空中散歩は足掛かりだと思ってた。アルマの想像を飛び越えて、みんなのおかげで腕利きのバイヤーの目に留まるまでになった。なんと素晴らしいことだろうか。
アルマの夢が叶うではないか。
願ったり叶ったりではないか。
無論、きちんと完成させて、フラワーフェスティバルの企画の1つとして完遂させられたらの話し。
でもその前に、
「それはいいんですが、みんなで作ったものなのでちょっと相談しますね。お金の絡む話しはしっかり承諾をとっておかないと、後々面倒くさいことになりますので」
「超しっかり者なのねん。前向きに検討してもらえるのは嬉しいわぁん♪」
♪ ♪ ♪
「――――というわけで、使用権を販売したあとの金銭の配分はどうしましょう」
散々、完成したあとの話しで、と念を押しておいた。お流れになる可能性だって否定できないのだから。
それでもこの段階で話しを持ちかけてくるということは、それなりの信用を得てるからだろう。
あるいは成功する確信があるのかもしれない。プロから見てそう思ってもらえるなら心強い。
評価されてると思うと超嬉しい。
まずはシェリーさんから窺ってみましょう。
「真面目だとは思っていたが、ここまでしっかりしてると将来が怖いな。ユノみたいになりそうで。私のことは気にしないでくれ。ほとんど参加できてないし、マジックアイテムのきっかけはたしかに私にあるのかもしれないが、アルマの見識があっての結果だしな (それに年下の企画だし、ちょっとアドバイスをしたからって、それでお金を取るなんてとてもできない。いい歳した大人がこんな少女から、わずかなお金を無心するなんて良心が痛む。お金に困ってるわけじゃないし)」
マーリンさんはなんて言うだろう。
「私は好きでお節介しただけだから気にしないで。それにこれはアルマちゃんの夢の第一歩でしょ。私はまたみんなと一緒にご飯を食べたり、面白い企画に参加させてもらえればそれがなによりの宝ものなんだから (いやぁ~、きちんと相談するところはしっかりしてるなぁ。かと言って、いざお金の話しをされると気まずいわぁ。いい大人がこんな少女からお金を無心するなんてできないじゃない。お金に困ってるわけじゃないし)」
年頃のライラックにはむしろお金をあげたいくらい。
下郎の世話もしてくれてるので。
「たしかにメンバーの一員だけど、私たちはそっちには全然不参加だったし、お金をもらうだなんてとてもできないよ。でももしも衣装とかTシャツのデザインを使うんだったら、そっちの方でお金が欲しいな (やっぱりアルマは凄いなぁ。私は魔法関係はからきしだけど、衣装のデザインには自信がある。それでお金が貰えるなら欲しい。お金に困ってるわけじゃないけど、お金は欲しい!)」
ミレナさんはどうだろう。
付属品として提案したアクセサリーのぶんは請求してくれるかな。
「工房としては、空中散歩で使用するマジックアイテムの特許を申請する予定だから、それで収入は十分見込める。付随してブランドの向上が図れるならお金以上のものを得られる。これ以上はさすがに強欲かな。あたしとしては、また何かあったらステラを優先的に頼って欲しいってことくらい (やっぱりあたしの目に狂いはなかった。この子ならいろんなアイデアを出してくれるだろう。面白いものをいっぱい作るだろう。そうすれば面白い仕事がいっぱいできる。お金なんかよりよっぽど大事。人脈はお金より大事!)」
ほかのみんなはどうかな。
お金のことと一緒に今日までの感想を聞いてみよう。
「わたしもすっごく楽しかったよ。お友達もいっぱいできた」
「キキもヤヤもね、すっごく楽しいよ。キキもアルマお姉ちゃんみたいになるっ」
「本番はまだ先ですが、それでも私もとてもいい経験をさせていただきました。お金なんかよりもっと大切なものを我々は頂いてるんです」
「まぁ俺たちも……シェリーさんと話しができただけでも儲けもんだし。みんなにそう言われちゃあなぁ」
「イッシュに同じく。いい経験をさせてもらったよ。俺たちの場合は空中散歩以外の部分が多いけど」
全員辞退。
念のため、もう一度だけ確認しよう。
「本当にいいんですか? 覆水盆に返りませんよ?」
「ああ、二言はない。な、みんな」
一同は頷いて笑顔を向けてくれる。これ以上、念を押すのも失礼だろう。
こういうところは契約主義的な自分の性格柄か、何度も確認しようとしてしまう。
さらに言えば、廃れていた頃はお金に対して超シビアだったこともあって、異常なほどお金には執着する性分があった。
しっかりしてると褒められる反面、がっつきすぎて忌み嫌われるのではないかと考えてしまう。
そう思うと恥ずかしくて赤面してしまう。
赤面してしまいそうなので考えないようにしておきます。
「それで、買い取るっていくらになるんだ?」
シェリーさんの何気ない質問で雰囲気が変わった。
金額の大きさは成果と同義。自分たちが今、行おうとしてる事業にいくらの値段がつくのか。
提供側としては当然気になるところ。大きければ大きいほど、世の中に貢献する度合いが大きくなるからだ。
話しの決着がついたついでにデイビッドさんに金額を聞くと――――。
「そうねぇ、お祭り本番のお客さんの反応を見て、本部と相談してからだけど。アターシの見立てでは1億ピノってところかしらねぇ」
「「「「「1億…………ッ!?」」」」」
驚愕した一同の顔を見るからに凄い額のようだ。
最近引っ越してきたばかりで、というか異世界での金銭感覚がまだ薄いアルマからするとピンとこない。
お手軽ランチが500ピノくらいだから、ええと、まぁとにかく凄いってことかな。
驚愕したみなの顔を見て、商人は堂々と商品価値を説明してくれた。
「これってアレなのよ。世界中のどこでも通用するアトラクションでしょ。それに夢がある。むこう100年以上は愛されると思うのよね」
なるほどそういうことか。恒常的かつ広範囲で長期的に商売ができるアイデアだと判断されたからこその値段というわけか。
それよりも何よりも、プロに『夢がある』と評価されたことがどうしようもないほどに嬉しい。
魔法でたくさんの人を笑顔にする。
それがアルマの夢だから。
「デイビッドさんは世界を股にかけるバイヤーさんなんですよね。ということはアルマの、アルマたちの空中散歩で、世界中の人々を笑顔にしてくださるということですよね?」
情熱を向けると、彼の心にも火が点いた。
「素晴らしい! その通りだとも。アターシに任せてくれれば、世界中の人々を笑顔の渦に巻き込んであげられるわよ!」
「うおぉぉぉっ! なにとぞよろしくお願いしますッ!」
本番前に気合いの入る檄をいただきました!
アルマたち、みんなで作った魔法で、たくさんの人を笑顔にできる。
なんて素晴らしいことだろう。わくわくして、ドキドキが止まらない。
よっしゃ。いっちょ本番に向けて頑張らないとっ!
ガッツのポーズで振り向くと、みんなはなんだかそわそわしてた。
それもそのはず1億ピノ。
年収200万ピノの人が一切お金を使わずにようやく50年かけて得られるお金。目の色が変わらないほうがおかしいというもの。だけど二言はないとはっきり断った手前、手の平返しは大人のプライドが許さないと我慢する。
アルマとしてはお金はどうでもよくて、額が額だしやっぱり取り分を頂戴と言われても二つ返事で了解するところ。
なのだけど、こっちから提案するのは気まずい。アルマからは何度も念押しをしてしまったしで、切り出すのは逆に彼女たちのプライドを傷つけかねない。
このもやもやした空気をどう晴らせばよいのやら。
「あれ、どうしたんですか。何かあったんですか?」
ナイスです、ベレッタさん。
ユノさんのところに行ってて、こちらの話しを聞いてなかった。例えるなら一般人の登場で、場の空気をうやむやにできそうな予感。
「実はデイビッドさんから商談があって、アルマたちの空中散歩の使用権を買い取って下さるということなんです。世界中のイベントで取り扱ってくれるって、それでたくさんの人を笑顔にできるって」
知ると、自分のことのように驚いて、感動して、涙を浮かべてハイタッチ。からのハンドシェイク。
「凄いっ! 凄いよアルマちゃん! これで夢が叶うんだね!」
「そうなんです。でもまだまだこれからです。アルマの道の最初の一歩ですっ!」
自分のことのように褒めてくれるベレッタさんの、なんと素敵な笑顔だろう。
お金のことはまたおいおい相談するとして、今はアルマの夢の一歩が進んだことを喜ぼう。
あぁ、なんてお酒のおいしい日なのだろう。
料理もうまければ心も躍る。
まさに、この世の春よ!
~~~おまけ小話『お金の話し。大事な話し』~~~
暁「1億ピノ。みんなで分ければいいんじゃない?」
シェリー「いや、金銭の確認を先にしなかったのは落ち度だったかもしれないが、二言はないとまで言い切ってしまった手前、手の平返しは恰好悪すぎるだろう。正直、今思えば少しでも心が揺れてしまった自分が恥ずかしい」
マーリン「私は本当にお金はどうでもいいわ。アルマちゃんと知り合えただけで儲けものだもの。強いて言えば、面白い食材とかレシピを見つけたら、是非教えて欲しいってところかな。あと私の助手になって欲しい」
ミレナ「ぐぬぅ。まぁウチの場合はお金を受け取るにしても、個人じゃなくて工房にだから、あんまし関係ないか」
ライラック「衣装が採用されれば私にもお金が入るはず!」
暁「たくましいな。だがそこが素晴らしい! この子は将来、良い商人になるぞ」
デイビッド「ふわふわふりふりのほうはちょっと癖が強いから難しいかもだけど、こっちのTシャツは誰が着てもよさそうね。スタッフ専用Tシャツっていう扱いで本部に打診してみるわん♪」
ライラック「是非ともお願いしますっ!」
マーガレット/キキ/ヤヤ「「「すーん…………」」」
アルマ「た、確かにちょっと変わった衣装だけど、みんなにはとっても似合ってて素敵だと思うよ?」
キキ「え…………でもさっきかわいくないって…………」
アルマ「あ~~あ~~え~~っと~~~~…………」
暁「アルマには似合わないかもしれないが、3人には似合ってるぞ♪ それそれ~」
マーガレット/キキ/ヤヤ「「「ひゃあ~~くすぐったいぃ~~♪」」」
ライラック「墓穴を掘ったね」
アルマ「ぐっ、ぐぬぬっ!」
アルマの夢が叶う時がやってきました。
評価尺度の一つとして金銭化があります。今回は超高額の値段がつきました。
今年の初競りでマグロが高値で取引されているニュースを見ましたが、高額になるとやはり努力が報われたみたいで嬉しいものです。
しかし変だと思いませんか?
魔法も科学もある世界で、これまで誰もしゃぼん玉で空を飛ぼうだなんて考えていなかったわけです。
その原因がベレッタとアルマに降りかかってきますので乞うご期待下さい。




