異世界旅行2-1 秋風吹きて夢心地 5
屋外に点在する木製の長机をぐるりと囲む形で席に着く。テラスとも、キャンプとも違う独特の雰囲気が異世界感を演出した。
残暑の残る風の香りは少し暖かい。
少し先には紅葉を迎えた木々が見える。赤と黄色と緑のコントラストが秋の訪れを教えてくれる。
わたしの右隣にアルマちゃん。左隣は意外にも、第三騎士団副騎士団長のレオさんが陣取った。魔法大好きお兄さん。アルマちゃんとわたしがどんな話しをするのか気になって隣に来たのだ。
気さくなお兄さんが人懐っこい笑顔を見せた。
「久しぶり、アルマちゃん。クリスタルパレスのアトラクションは順調?」
なぬっ!
既に顔見知りだったとは!
「はい。おかげ様で順調そのものです。ベルンのオータムフェスティバルまでには余裕で完成予定です」
気になって、会話の途中で割り込んでしまう。
「え、お二人は既に顔見知りだったのですか?」
「そうだよ。なんでも、アトラクションで魔法生物を使うっていうから、魔法生物の生成方法と幻獣図鑑を教えてあげたんだよ。なにをするのかはシークレットだから、まだなにも知らないんだけどね」
「アトラクションに魔法生物と幻獣。もしかして、背中に乗って空を飛ぶとか?」
聞くと、まだ見ぬ未来に頬を染めるアルマちゃんがいた。だけど、アトラクションの情報はトップシークレットみたい。
「子供向けアトラクションのひとつに、体験型シューティングゲームを用意しました。剣とか杖を使って幻獣を倒してスコアを稼ぐゲームです。ぜひとも遊びに来てくださいっ!」
子供にはすごく受けそう。でも戦闘系アトラクションなのか。あんまり気が乗らないなぁ。
ここでレオさんの隣に座るシャルロッテ姫様から朗報が届く。
「噂では、お菓子の家を作るのですよね。今からとってもわくわくですっ!」
「お菓子の家!」
それはものすごく興味がある。絶対に参加しなくては!
雑談に華咲かせるも、着席が完了したところを見計らって暁さんが注目を集めるために手を叩いた。
「それでは、まずはじめに説明しておかなくてはならないことがいくつかありますので、ご清聴願います」
「はい、はいはいはあーい!」
ご清聴願われて、我らがお姫様が騒がしくする。
「ローズマリーと、月下と赤雷と白雲とバーニアはどこにいるのですか?」
早くフェアリーに会いたいお姫様が吶喊した。わたしも早く会いたい。だけど、ホストの言葉を遮るのはよくありません。
レオさんが窘めるより先に、暁さんが丁寧な口調で断りを入れる。
「彼女たちは今、果物の収穫と樹木の防疫のためにお仕事中です。お昼前まで仕事をして、今頃はどこかでお昼寝をしてる頃でしょう。蝶の領地で仕事をしたはずですから、しばらくしたらここへ来ると思いますよ。月下の大好きな焼き芋を用意して待ってると伝えましたから。ですので、彼女たちと一緒に焼き芋パーティーをするのはランチの後になりますね」
「ありがとうございますっ!」
満足したシャルロッテお姫様はにこにこ笑顔で感謝を述べる。
さて、と切り返して暁さんは銀の板を手に取った。
「みなさまの前に支払い用のプレートがあります。メリアローザにおかれましては、こちらで決済をしていただくようになります。あたしの銀行に紐づけましたので、存分に飲んで食って、お土産を買って楽しんでくださいね」
これが噂のマジックプレート。生体認証的に個々人の魔力を認識することで、使用者以外の利用を制限するマジックアイテム。クレジットカードの暗証番号なんかよりもよほどセキュリティがしっかりしてる。
すごい。この魔法技術だけで世界進出できる。




