嚙み合う歯車、リズムを奏で 15
ここでライラックの助け舟が出航。
「お菓子の家は採用されそうだよね。世界中のお菓子で菓子の家を作るの。それからお花もいっぱい咲かせてカラフルにして、グレンツェンみたいに!」
「それ、とっても素敵だね! でも剣闘士の大会にお菓子っていうのも変な気がするけど。まぁいいか!」
考えることをやめた!
アルマの顔を覗いてみると、今にも夢の国に旅立ちそうな顔をしてる。ランチのあとにそよ風に触れてベンチに腰を据えたなら、まどろんでしまうのも無理はない。
最後にひとつ、アルマは幸せなため息をついて静かに喜んだ。
「歯車と歯車がかみ合って、カチコチカチコチ。心地よいリズムを刻み続ける。アルマにライラック、マーガレット、ミレナさん、エリザベスさん。カチコチカチコチ。ほかにもたくさんの歯車を回して回して回されて。回し回されカチコチカチコチ。いつかどこかの知らない誰かの歯車も回して、それがまたどこかの誰かを回して、たまに歯車の間をそよ風が吹き抜けて、アルマたちの気持ちを伝えてくれる。カチコチカチコチ。カチコチカチコぐぅーーーーーーーー。すぅーーーー……、ぐぅーーーーーーーー…………」
「突然寝たっ! ポエムを謳いだしたと思ったら寝入ったっ!」
つっこまずにはいられなかった。
いかん。なんだか面白くて笑いがこみ上げてしまう。あんまり大きな声を出したら、せっかく気持ちよさそうに寝たアルマを起こしてしまう。
深呼吸しよう。深呼吸して息を整えるのだ。
「はふぅー……。それにしても、歯車を回して回されてカチコチカチコチ、か。アルマは感受性が豊かだなー」
呟いて、エリザベスがバトンを繋いだ。
「ですね。歯車の隙間をそよ風が吹き抜けるってのもいいです。機械的でありながら、自然に生きる人間の情緒を表してるように思えます。はっ! ダイニングテーブルの中に巨大な時計を仕込んでみるってのは斬新かも!」
斬新すぎるアイデアに、ライラックがつっこんだ。
「なんだかそれ、あまりに忙しなさすぎて落ち着かないかもです。食卓とか団欒は、ゆったり過ごしたいです」
「「そりゃそうかっ!」」
エリザベスのアイデアを想像して、ちょっといいなって思った自分は彼女と言葉が重なった。
まどろみを誘うグレンツェン大図書館の影の中。肌は涼しく、心はあったか。
季節も時計も、人の輪も、回る回る世界は晴れやか。
嗚呼、世界に幸多からんことをっ!
~おまけ小話『ガーリーはどこに?』~
ライラック「お菓子の家、勇者カブトの冒険は子供向け。ミステリーとホラーハウスと、アルマたちが作った地獄は大人向け。成人女性向けのアトラクションが少ないと思う」
アルマ「そういうの、アルマにはよくわからん。子供向けにすれば大人の財布が緩むだろうという目論見があったから、子供向けアトラクションが必須だとは思った」
ミレナ「悲しいほどに商売上手だな……」
エリザベス「アルマたちが作った地獄、っていう表現はどうなん?」
ペーシェ「ちなみに、成人女性、概ね15歳から25歳をターゲットにしたアトラクションとなると、ライラックとしてはどんなアトラクションが受けると思う? あたしもそのへんの年齢層のことは考えてなかったから、参考までに教えてちょ♪」
ジョセフ「一応、ミステリーアトラクションのミストタウンとホラーハウスは成人以上がターゲットなんだけどな……」
ライラック「まず、ホラー要素は無しで」
ペーシェ/ジョセフ「「うぅっ!」」
エリザベス「なんだ、この2人。ホラー要素がないとダメなのか?」
ミレナ「まぁ、こういう体験型のアトラクションはミステリーとかホラーって相性いいからな。作りやすそうだし」
ライラック「私はもっとガーリーできらきらしてて、普段できないような非日常が味わえるアトラクションがいいですっ!」
ペーシェ「こ、これが高い女子力持つ者の感性か…………ッ!」
ミレナ「いや、君も女子だろ? (あんまり人のこと言えないから黙っておこう)」
ライラック「そうですねー。個人的にはファッションに興味があるので、セレブがランウェイで着るような服を着てみたいですっ!」
アルマ「洋服屋さんに行けばよくね?」
ライラック「おだまりっ! それからそれから、白雪姫とか、ロミオとジュリエットとか、御伽噺の主人公になってみたいですっ!」
ペーシェ「ぐはあッ!?」
ミレナ「ペーシェはなんでダメージ受けてんの!?」
ライラック「花びらを敷き詰めてダイブしてみたいっ!」
アルマ「鉋屑なら用意できるよ?」
ライラック「南の海で人魚姫みたいになってお魚さんと泳いでみたいっ!」
アルマ「サマーバケーションで使ったメタフィッシュを使えば潜水できるよ?」
ライラック「オーロラと星空の下でディナーがしたいっ!」
アルマ「それこそ現地に行けばよくね? 飛行機でひとっ飛びじゃん」
ライラック「アルマ夢無さすぎッ!」
アルマ「えぇーー…………」
ペーシェ「……………………」
エリザベス「ところで、ペーシェが死に体なんだが、なぜに?」
マーガレット「そんなことより、5つめのアトラクションはメインとサブがあるって言ったよね。サブてなぁに?」
アルマ「デフォルメされたモンスターを剣や杖を使って退治するアトラクションだよ。子供から大人まで楽しめる仕様になってる。遊び方も超簡単だから、ぜひとも遊びに来てね♪」
マーガレット「おぉ~っ! わかった!」
ライラック「全然ガーリーじゃないっ! ガーリーじゃなーいっ!」
アルマ「ライラックはずっとお菓子の家に住んでろ。映えスポットも用意しとくから」
なんとかして華恋の要望を叶えられそうになりました。あとはミレナが華恋に直接会って話しをするだけです。ということで、急遽ミレナが異世界旅行決定となりました。
ミレナは華恋を勧誘することができるのでしょうか。
次回から第二回異世界旅行決行です。主観ベレッタでお届けします。
異世界からの参加者はグレンツェンから、ヘラ、すみれ、ミレナ、ラム、レーレィ、アーディ。
ベルンから、シェリー、プリマ、サンジェルマン、レオ、ベレッタ、ニャニャ、リリィ、ベレッタ、シャルロッテ。
メドラウトからインヴィディア、スカサハ、クラリス。
聖アルスノート王国からリリス。
このように、とにかく大所帯です。でも主観にしてるキャラ以外はあまり気にしなくていいです。全員をフォローするのは無理ですからね。どうやっても。




