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嚙み合う歯車、リズムを奏で 14

 7月にアルマが故郷に帰省したってんでお土産にもらったアロマオイルが素敵だった。香りもさることながら、お菓子に紅茶に入れてよしと、食用にできる点が素敵ポイント。瓶のパッケージの板も美しい。焼き鏝が打たれた木板の風合いが最高にクール!

 使ったあとはインテリアとしても機能する。今では一輪挿しの花瓶としてダイニングに華を添える手伝いをしてくれている。


 そんな素敵アイテムを作る人だ。フラワーシロップも素敵アイテムに違いない。

 気になるのは『フラワー』というくくり。どんな花を使ってるのか聞いてみよう。


「ローズじゃなくてフラワーなんだね。どんな花を使ってるの?」

「りんごの花とか、桜とか、ラベンダーとか、いろんな種類があって楽しいですよ。ミント系のものもあって、爽やかな甘さを楽しめます。どんな香りも食用にできる特別な技術があるのですっ! たとえトリカブトや彼岸花でも、香りだけを抽出するので人体に無害です」

「毒を持つ花のシロップか。それは、大丈夫って言われてもかなり躊躇するな」


 いや、大丈夫って言われても怖いから絶対に口にできないな。すごい挑戦的な試みをする人だ。そもそも毒を持つ植物のアロマオイルにまで手を出すって、相当な好き者か。

 アルマの故郷に行ったなら、アロマオイルの製作者にも会えるだろうか。楽しみだ!


 ひとしきり、アロマオイルの話題が収束したところで、エリザベスがアルマを睨む。


「豪華景品のラインナップにステラのペアウォッチって聞こえたんだけど、なんでエキュルイュには声を掛けてくれなかったわけ?」

「いやぁー、基本的にダンジョンを攻略させるつもりないので、長期保管できるものか、カタログギフト的なものに限られるんです。家具は人が使ってないとダメになるじゃないですか。だから無理かなーって思って」

「家具のカタログギフトもあるから、それを景品に加えてくれ」

「ありがとうございますっ!」


 売り込んできやがった!


「それにしても、本当にダンジョンを攻略させるつもりはないんだな」


 思わず口が滑った。しょうがないじゃん。あまりに強調するもんだから。それに、ステラとしては、せっかく作ったペアウォッチなんだから、誰かの手にとって使ってほしいもんです。

 そのための物作りなのだから。

 愚痴をこぼすと、アルマが打開策を考えた。


「そうですね。もしも反響があったら、景品はいつか販売するかもしれません。こちらとしても在庫をかかえ続けるのは苦しいかもなので。でも、もしもアトラクションを別のところで開催してほしいってなったら、この限りではありませんが」


 別のところで開催してほしい、という部分にライラックがかみついた。


「そんな無理ゲーなんて、誰もどこも欲しがらないと思うけど」


 これをアルマが優雅に否定する。


「いやいや、きっとどこかに正気の沙汰じゃない人はいるって」


 自分たちのやってることが正気の沙汰じゃないのは認めるのか……。


「ライラさんの話しだと、ワールド・グラディエーター・チャンピオンシップ運営委員会に売り込めばいいって言われました。会長さんとライラさんは親友同士ということなので、ライラさんがあお…………紹介してくれるって言ってくれました」


 今、『煽る』って言おうとした?


「WGCに認められれば、アルマの魔法が世界中に知れ渡ります。アルマの魔法でたくさんの人を笑顔にできますっ!」

「話しを聞く限り、今回のパレスミステリーのアルマが担当してるやつでは、多くの人を笑顔って言うより、憤怒と怨嗟の渦を生み出しそうだけど?」

「はっ!」


 今更気付いたのか!?

 一瞬、残暑の隙を突いた冷たい風が吹き抜けた。

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