嚙み合う歯車、リズムを奏で 7
スカウトする側からしたら大事なことなんだ。希望的観測100パーセントだが!
呆れ果てるアルマを横目に真剣に考える。華恋にいかにステラとグレンツェンが素晴らしい場所かを教えなくてはならない。
そのためには、彼女に直接、グレンツェンに来てもらうのが手っ取り早い。
というわけで、アルマに聞こう。
「華恋って人は旅行とか好きなタイプ?」
「多分好きだと思いますよ。あと、スイーツと宝石類が大好きです。ジュエリーデザイナーをしてます」
「スイーツはともかく、宝石類が好きなのか。ワンチャンあるな」
「ワンチャンあるんですか?」
「時計には装飾として宝石をあしらうことも多いからな」
「華恋さんの性格からして、時計に宝石は使わないと思われますね。その証拠に、自分使いの時計には一部として宝石を使ってないですし」
「自然金とギベオンは用意してくるのに……」
「ギラギラとキラキラは違うんですよ。シンプル且つ究極的に研ぎ澄ました美しさが好みかと思われます。ピアスもシンプルイズザベストなものですから」
「こんなに複雑怪奇な置時計を設計してくるのに……」
手元を見て、誰がどう見ても複雑怪奇な動きをする置時計を一瞥する。
どうやらやっぱり本人に会うしかないらしい。楽しみだ。久しぶりの海外旅行。楽しみだ。
「今、海外旅行っておっしゃいました?」
「言ってない。出張って言った」
うっかり嘘を吐いてしまった。
堂々と話しを逸らそう。
「そんなことより、思いのほかいい時間になったな。よかったらランチにしないか? もちろん、あたしのおごりだ」
「うわぁーい、やったぁー♪」
両袖を上げて喜ぶアルマの後ろにエリザベスがいた。
「マジすか? やったー♪」
「エリザベスは社会人だろうが。いいけど」
アルマは振り向いてエリザベスに挨拶をする。
「お久しぶりです。エリザベスさんのおかげでパレスミステリーがうまく進んでます。オータムフェスティバルでお披露目予定なので、ぜひともお越しください!」
「そうそう、それについての進捗をアルマから聞きたかったんだよね。ランチしながら聞かせてほしいな」
パレスミステリー!
エキュルイュに仕事の相談をしたのに、ステラに相談してくれなかったやつ!
「なんでそれ、最初にあたしのところに相談しに来てくれなかったの!?」
怒である。仕事の依頼はまずステラに相談するように釘を刺しておいたはずなのに。ぷんすこ怒ると、アルマは至極当然の切り返しをした。
「建築関係はエキュルイュなので」
「そこは、ほら、あたしのところに来て、それからエキュルイュを紹介って形でよかったじゃん」
言うと、エリザベスが呆れた顔をして肩をすくめた。
「姉さん……それ、ただの二度手間っすわ……」




