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嚙み合う歯車、リズムを奏で 5

 自然金を手のひらで転がして遊んでると、色よい返事があったのか、アルマは満面の笑みで卓に戻った。


「暁さんからオーケーが出たので、ぜひともいらっしゃってください。ちなみに、出発は3日後の昼前です。大丈夫でしょうか?」

「大丈夫。出張扱いにしてもらうから」

「それはよかった! それと、いろいろと制約がありまして、その日はアルマたちの里帰りと、ベルン騎士団の一部の人間が技術共有やらなんやらで一緒にいます。ミレナさんとは別行動にはなると思いますが、大丈夫でしょうか?」

「それは全く問題ないよ。にしても秘匿主義の倭国が技術の共有とは。世界が動きそうな予感がするな」


 秘匿主義の強い倭国だからって、実際、技術共有や継承に消極的というわけではない。これはただのイメージである。印象と固定観念の産物です。

 真剣に新しい未来図を妄想するあたしを前に、アルマは一瞬固唾を呑んで、次に放つべき適切な言葉を探した。


「――――えぇと、制約はまだあって、7泊8日限定です。滞在期間を短くすることも、伸ばすこともできません」

「滞在期間が決まってるのは外国旅行につきものだから気にしないよ。7日もあればクライアントとの意見もまとまるだろう。大まかな形は完成してるから、あとは詰めの細かいデザインだけだからね」

「それはよかったです。あとですね、外界との連絡が取れません。国際電話も通じないので悪しからず。インターネットもありません」

「マジか。それは少し不便だな。本部と連絡を取りながら、材料やら工期やらの調整をしたかったんだが。まぁ仕方ない」

「一部、撮影した写真については消してもらうか、封印してもらう必要があるかもです」

「ま、マジか。以前に倭国に行った時もそんなことはなかったが、郷に入りては郷に従え、だよな」

「クライアントの華恋さんは、メリアローザを案内する係に抜擢されたので、旅行前半はお仕事の相談ができないかもです」

「それはまぁ、彼女自身の仕事の都合もあるだろうから仕方ない」

「一部指定区域は立ち入り禁止です。以前、ライラさんが無断で立ち入って、一年間の出禁を食らってます」

「あの人…………」


 ライラ・ペルンノート。

 剣闘士時代からなにかと伝説の残る彼女は、ベルン第二騎士団団長としても伝説を作り続ける。よくも悪くも……。

 あの人、と言ったが直接の知り合いではない。そうでなくても、よくニュースになってるからつい知り合いのような言葉を使ってしまった。

 それだけ愛嬌と親近感のある存在なんです。よくも悪くも。

 一瞬俯いて、気を取り直してアルマの言葉の続きを聞こう。


「グレンツェンで使わる金銭はメリアローザでは使えません。ので、お金と食と住は暁さん持ちです。めいいっぱい、メリアローザを堪能してください」

「え、衣服以外は暁、アルマを留学に推挙した人持ちなの? お金は換金すればよくない?」

「換金所がありません」

「うそん…………」


 そんなことある!?

 という顔をするあたしに、アルマは無茶ぶりを仕掛けてきた。


「最後にですね、ミレナさんには手作りスイーツを作って持って来てもらいたいと思います」

「手作りスイーツッ!?」


 手作り、だとっ!?

 自炊はするが手作りのスイーツなんて、もう何年作ってないだろうか。


「買ったものじゃダメなの?」

「必ず手作りでお願いします。後悔はさせませんので。簡単なものでいいんです。プレーンなクッキーで十分です」


 クッキー。30にもなって作り方がわからんあたしは女子力低すぎでしょうか。倭国がどうとかこうとか以前に、こんなところで頭を悩ませることになるとは思わなかった。

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