ホムパより、愛を込めて 27
~おまけ小話『オータムフェスティバル』~
シェンリュ「出し物がなにも決まんねえーーーーッ!」
フィティ「なにもではないでしょ。カフェするって決まったじゃん」
シェンリュ「カフェでなにを出すか決めてないじゃん。どうすんの?」
リリィ「なんでそんなに他人事なんですか?」
マルコ「後輩の歓迎会も兼ねてるんだから、頼れる先輩ってところを見せないとね」
ダニエル「それはそうだが、意見が割れすぎて収集つかんぞ?」
アクエリア「パフェ」
パーカー「ステーキ」
エディネイ「カニ」
カルティカ「モツ味噌煮込み」
カルロス「ピッツァ」
シェンリュ「まとまりねえーーーーッ! 結束力ゼロかッ!」
リリィ「シェンリュさんだって火鍋火鍋って騒いでたじゃないですか。間をとってホラーハウスにしましょう」
マルコ「なんの間を取ったの?」
アナスタシア「一応、私たちも手伝いってことで参加するんだけど、こうまとまりがないとどうしようもない」
シェンリュ「先輩なんだからなんとかしてくださいよぉ~!」
アナスタシア「ナチュラルにキラーパス飛ばしてくるのやめて」
シェンリュ「こんな時はすみれさんに相談だっ!」
アナスタシア「外部の人にキラーパスを飛ばすのはもっとやめて」
すみれ「カフェをやるなスイーツがいいと思う」
アナスタシア「存外やる気満々だった」
すみれ「オータムフェスティバルなので、秋の食材を使ったスイーツが喜ばれると思います」
アナスタシア「超正論」
すみれ「柿、栗、かぼちゃ、マルメロ、くるみ、桃、りんご、レーヌクロード、ミラベル。数えだしたらきりがないっ!」
シェンリュ「ちなみに、すみれさんが今作りたいスイーツがあるとすればっ!?」
すみれ「果物たっぷりな季節なので、タルトが作りたい。生地にかぼちゃを混ぜて香ばしく。完熟した柿を煮詰めて生地に敷いて、たっくさんのレーヌクロードを敷き詰めるの!」
シェンリュ「想像しただけでよだれが出ちゃう! というわけで、出し物がひとつ決まったな」
すみれ「えっ!?」
全員「「「「「異議なし」」」」」
すみれ「ええっ!?」
アナスタシア「いや、ちょっ、あなたたちね、すみれはアルバイトとはいえプロの料理人なんだから、レシピを攫うようなマネはご法度だから」
すみれ「え、いいえ、それは別に構いません。誰でも簡単に思いつくようなアイデアですから」
アナスタシア「そう? 念のために聞いておくんだけど、すみれのレシピって素人でも作れるの?」
すみれ「柿の完熟具合の見極めが難しいかもしれません。私が作るなら、柿はぶよぶよして柔らかくなるくらいまで完熟させます。でも完熟が少しでも行き過ぎると腐敗の段階になってしまうので、きちんと目利きをする必要があります」
エディネイ「それ素人じゃ絶対無理なやつーーーーっ!」
シェンリュ「タルトにそこまで手間暇かけるすみれさんマジすげえーーーーっ!」
カルロス「完熟と腐敗の見極めなんて、一般的に料理出来る人の域超えちゃってますやん。改めて尊敬します」
ダニエル「ともあれ、振り出しに戻ってしまった。でもスイーツは作るほうも食べるほうもテンション上がるからいいと思う」
シェンリュ「いいや、想像してしまったからには柿とレーヌクロードのタルトが食べたいっ!」
マルコ「食べたいんじゃなくて、新入生と一緒に作って売るのが目的だからね? 忘れないでね?」
すみれ「私も柿とレーヌクロードのタルトが食べたいっ!」
ライラ「閃いたっ! じゃあこうしよう。すみれがうちに2泊3日して、その間に柿のジャムを作る。作ったジャムは冷凍保存して当日に出せるようにしておく。それと同時に、何人かがすみれからタルトの作り方を教わる。というのはどうだろう?」
アクエリア「我々としては助かるのですがぁ~、すみれさんとライラさんのご都合はいかがでしょうかぁ~?」
すみれ「私は秋になると講義が全部修了して落ち着くから時間はとれるよ」
ライラ「私は今回、オータムフェスティバルの全体の監督役だから融通が利く。2泊3日くらいならなんでもない。柿は加速術式を使って熟成させるから、1時間と待たずに用意できる。あと、食材を用意するから息子たちにビーフシチューを作ってほしい」
アナスタシア「本音!」
すみれ「そんなことならお安い御用ですっ! 私が作った料理で喜んでもらえるなら、これ以上に嬉しいことはありません」
シェンリュ「すみれさん、マジフェアリーっ!」
ライラ「あ、それと、人数と出展スペースと設備は充実してるんだから、せめてあとひとつくらいはスイーツを出せよ。外部の人間を入れずに、自分たちで納得したものをな」
アナスタシア「急に正論を振りかざして話しをぶった切らないでください」
マルコ「それなら、焼きりんごはどうかな。例年のオータムフェスティバルは気温が低いから、あつあつのスイーツはどうだろう?」
カーター「でも、焼いたりんごまんま出すっていうのもなぁ」
マルコ「俺だけかもしれないんだけど、家でまるまる1個、りんごを焼いて食べるって経験、ある?」
フィティ「――――あ、言われてみればないかも」
すみれ「焼きりんご、とってもいいアイデアだね! シナモンをふりかけたり、はちみつをかけたり、素体がシンプルだからいろんな味変が楽しめるね!」
エミリア「出た、すみれさんの味変万化!」
アクエリア「トマトマトンカリーの付け合わせが豊富で食べ飽きなくて楽しかったですぅ~♪」
ライラ「トマトマトンカリー!? なにそれ知らない!」
すみれ「すごく好評でした。ちょっと時間がかかるので、これは作ってからライラさんちに行きますね♪」
ライラ「よっしゃああああああああッ!」
リリィ「でしたら是非、ライラさんちでホムパをっ!」
アルマ「やるとなったらやるだろうけど、すみれさんのホムパスイッチが入ったらとんでもないことになるから覚悟したほうがいいよ?」
リリィ「覚悟ッ!?」
アルマ「どんどん舌が肥えていくっ! 油断すると食べすぎて、お腹も肥えていくっ!」
リリィ「背に腹は代えられませんっ!」
ウォルフの登場でなんとかヤヤは反省し、キキは調子を取り戻しました。
すみれもすみれでとりあえず納得したようです。ただし、シェンリュの言った『強さ』を精神的な強さではなく、物理的な強さと捉えました。なぜなら、すみれにとって印象に残る強い女性は【紅暁】その人だから。
強い女性と聞いてすみれの脳裏に浮かんだのは3人。育ての親の1人、ヘラ市長、そして紅暁。ではなぜ暁にフォーカスしてしまったのか。
赤髪だからです!
すみれは赤色大好きなので、赤色に注目してしまう癖があるのです。彼女の悲しき性にて、すみれは明らかに間違った方向へ向かってしまいます。
日常系のゆるい小説とは思えない方向へフルスロットルしちゃいます!




