ホムパより、愛を込めて 25
夜はまだまだこれからと言いたいところだけど、キキちゃんとヤヤちゃんの眠気眼を皮切りに、お開きの構えとなる。
せめて片付けくらいは手伝わせてほしいものです。名乗りを挙げるも丁寧に断られてしまった。
申し訳ない気持ちになると、すみれさんは我々の心を察して最後にひとつ質問を唱える。
「私は両親と一緒に暮らしたことがなくて、だから、その、母親に必要なものってなんだと思いますか?」
ナチュラルにヘビーなストーリーのピースがオープンされた。
デリケートな部分に触れると地雷爆発。つっこみたい気持ちを抑え、言葉の前半ではなく後半にフューチャーしよう。
まずはエミリアが口を開いた。
「そうですね。やっぱり優しさではないでしょうか。寛容な心とか、包容力とか。母性ってそういうものなんじゃないかと思います」
「なるほど。優しい人にぎゅっとされると安心するよね。アクエリアさんはどうかな?」
「そうですねぇ~。優しさも必要だと思いますけどぉ~、物事を上手に進めるための計画性って大事じゃないでしょうかぁ~。子供って駄々をこねるものですからぁ~、上手にまとめてまぁるく収める計算高さがあるといいなぁ~って思いますぅ~」
「なるほど。子供の願望と大人の事情は全然違うものだよね。そのへんはルーィヒさんに相談しなきゃかも。シェンリュさんはどうかな?」
聞かれ、秒で脳裏に浮かんだ言葉はあたしらしい答えだった。
「やっぱり、『強さ』じゃないでしょうか。ほら、母は強しって言うじゃないですか。そりゃ、父親に守ってもらいたいところですけど、父親としての強さと、母親としての強さってニュアンスがちょっと違うと思うんですよ」
「なるほどっ! 両親共々強いと子供は安心だね。あっ! そういえば!」
あたしの言葉でなにかを思い出したようだ。いったいそれはなにか。言葉を待ち構えて、またもつっこみどころ満載な言葉が飛び出した。
「占い師のデューセーレさんに、『自分よりも強い力を持つ者からの圧力に注意が必要です。極めて独善的で悪辣な悪意にさらされる未来が見えます』って言われたんだった」
「不穏すぎるッ!」
あまりに不穏すぎてめっちゃでかい声が出てしまった。
いやでもこれ仕方なくない?
独善的で悪辣な悪意にさらされる未来とか、心配でしょうがないわ。
もしも悪意持つ誰かのせいですみれさんがのっぴきならない状況になるのなら、あたしは可能な限り手助けするための協力がしたい。
おいしい料理に素敵なホムパ。なにより彼女たちと一緒に言葉を交わすことがどうしようもなく楽しい。
また会いたいって思わせる。彼女の笑顔と真心にはそんな魅力が詰まってる。
だからあたしはすみれさんの両手を取って決心した。
「困ったことがあったらいつでも相談してください。あたしにできることならなんでもしますっ!」
「わぁっ! ありがとうございます。ほんとうに心強いです」
続いてエミリアとアクエリアが手を重ねる。
「わたくしもシェンリュと同じ気持ちです。わたくしの故郷を愛してくださる方になら、どんな協力だって惜しみません」
「わたしもですぅ~。魔法のことなら任せてくださいねぇ~♪」
「みなさんほんとうにありがとうございます!」




