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ホムパより、愛を込めて 13

 妹のほうは半分くらい理性を失った獣。説得しても無理そう。

 姉は呆然とするものの、正気ではいる。なのでこちらにアプローチしよう。ヤヤちゃんが誠心誠意謝れば、キキちゃんの怒りが収まるかもしれない。とりあえず、シュネーバルを食べるのをやめさせるか。


「ヤヤちゃん、今の状況、どういう感じか分かる?」

「食後のおやつタイムです♪」


 ダメだ、罪悪感ゼロだ。


「キキちゃんが怒ってる理由は分かる?」

「失恋したからではないでしょうか。男に本気になるから火傷するんですよ」


 どこで覚えた、その言葉。

 この子、ほんとに10歳か?


「キキちゃんはね、本当にその男の人を好きになったの。ヤヤちゃんにはまだ分からないかもしれないけど、大好きな人に思いが伝わらないっていうことは本当に辛いことなの。ヤヤちゃんもさ、大好きなチョコレートを食べられなかったら辛いでしょ?」

「その時はチョコレートを食べられるように根回しします」


 話し通じねえーーーーっ!


 アプローチを変えよう。アルマに事情を聞こう。

 妹大好きの姉が、どうして妹の心の傷をえぐるようなことを言うのか。


「それはだね、ヤヤちゃんがキキちゃんのことを大好きだからなのだ」

「大好きなら慰めたり励ましたりするでしょ?」

「ヤヤちゃんはあれでさみしんぼだから、キキちゃんに嫁に行かれるとひとりぼっちになって寂しくなるの。だから破談になって喜んでる」

「そういうことかあー……」


 それで上機嫌なのか。破談になって、ひとりぼっちにならなくて済んだと安心してるのだ。

 キキちゃんが不機嫌であることは、ヤヤちゃんにとって自分が安心できる状況を強く印象付けるもの。

 だから慰めるでもなく、励ますでもなく、失恋してよかったって言い方になってるのか。


 これは困った。こうなるとヤヤちゃんから謝罪の言葉がでてこない。

 ヤヤちゃんの気持ちは気持ちでそれは肯定されていいところはある。だからって、キキちゃんの失恋を喜ぶ姿勢は正さなくてはならない。


 でもなんかこの様子だとなに言ってもダメそうなやーつ。

 一番いいのは、ヤヤちゃんが心を開いてる人に言葉をかけてもらうこと。

 なにを言われるか、ではない。誰に言われるか、が大事なのだ。


 アルマにも、すみれさんに諭されても糠に釘。どうしたものか。


「ねぇ、アルマ。ヤヤちゃんと一番仲がいい人って誰かいる?」

「それならウォルフさんだね。でも今日はティレットさんと、彼女の父親の友人の息子さんとの会食についてってるから家にいないはず。とりあえず、テルしてみる?」

「ダメでもともと。てかなんか、アルマ、なんでそんなに余裕綽々なわけ?」

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