ホムパより、愛を込めて 9
故郷華国でお菓子の家を建てるなら縁起物は外せないな。桃饅頭はマストで。屋根は全面薩其馬を並べる。提灯は貴妃餅を吊るして魔法で明かりを灯そう。八宝飯もあんまんもしこたま並べて飾りたい。
そんなことを考えてたら無性に月餅が食べたくなってきたああああーーーーーーー!
妄想が膨らみわんだふる♪
そんなあたしの前に、ヤヤちゃんが食後のスイーツを持ってきた。
満月のような焼き菓子。月餅である。
「なんという僥倖!」
「月餅に書くべき文字は、難しくてできませんでした。でも中身はおいしくできたと思うので、飲茶と一緒に、みんなで食べましょう♪」
「ヤヤちゃん最高! このサイズからして、キキちゃんも一緒に作ったの? 手作りだよね?」
「はい。私たち2人で真心込めて作りました」
「ひゃっふぅ~っ! キキちゃん、ヤヤちゃん、ありがとぉーうっ!」
それと、と切り出してすみれさんに向き直ろう。
「このトマトマトンカリーに使われてる超絶品柔らかマトンはお持ち帰り分、ありますかっ!?」
「ごめんなさい。マトンはそこまで量が用意できなくて。カリールーは余るから、それはお持ち帰りできるよ?」
「ぜひともお願いいたしますっ!」
マトンがないのは残念だ。でも、カリールーだけでも十分。十二分である。
というか、なにか持ち帰っておかないとクラスメートのやつらに小言を言われるおそれがある。だいぶ煽ったからな。溜飲を下げておかないと面と向かって腹の中身を吐き出されるかもしれん。
さてさて、きゃわいいヤヤちゃんたちの作った月餅をいただきましょう。
月餅独特の文字は刻印されてない。手作りなので仕方ない。あたしもそこまで要求するつもりはない。
一般的に月餅は背の低い円柱状の形か、ドーム型の形をしてる。ヤヤちゃんたちが作ったものは胡麻団子のように丸い。お月様のように丸くてちっちゃいお団子。
中身はナッツ入り。小豆入り。バラの花の餡入り。
バラの花の餡入り!
「んん~っ! 蓮の実の月餅はあるけど、バラの花の餡は初めて! めっっっちゃおいしいっ!」
「ですよねですよねっ! 個人的にはチョコ入りにしたかったんですけど、今回は伝統を尊重して餡にしました。今回はっ!」
「今回は!」
ヤヤちゃん、いつか絶対にチョコ入り月餅を作るつもりだ。それもよきかなっ!




