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もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 30

 さて、と踵を返して双子に向き合おう。なにせ今回参加するお菓子の家は子供向けアトラクション。なればこそ、最も重要なのは子供の意見。

 よい物を作りたいからこそ、よい思い出にしてもらいたいからこそ、多くの意見を取り入れて進化させていかなくてはならない。

 特に子供と大人の感性は違う。それを分かってるミラベラさんは物怖じしない。


「どうだったかな。4つのスイーツを食べてもらったんだけど、どれもおいしかった?」


 問うと、双子は満面の笑みを返してくれる。


「どれも本当においしいですっ! 全部きらきらしていて、全部全部、あまあまでおいしくて、幸せな気持ちになりましたっ!」

「全部全部素敵っ! お芋も、トマトも、ミカンも、カボチャも! おいしいスイーツを食べさせてくれてありがとうっ!」


 大満足の双子に、ミラベラさんもありがとうを贈る。


「こちらこそ、おいしく食べてくれてありがとう。職人冥利に尽きるわ。もしよかったら、ほかのスイーツもあるから買っていってね。たくさんおまけしてあげる♪」

「「ありがとうございますっ!」」


 あまあまなスイーツを頬張って、喜ぶ彼女たちのなんと幸せな表情か。

 見てるこっちまで楽しくなっちゃう。


 それでは、おいしいスイーツをいただいたので、お店に貢献するといたしましょう。

 ザッハトルテ。洋ナシのタルト。アプリコーゼン・クーヘン。いろいろあるけど、フィエリテに来たらまずはこれ。


「フィエリテと言えばシュネーバルですよね。プレーンな粉砂糖、ナッツ、チョコ、ジャムを使ったものまで様々!」


 雪玉を意味するシュネーバル。大人の拳大サイズの揚げパンに粉砂糖をまぶしたことから名前の由来がきている。

 ボリュームがあって食べ応え十分。フレーバーの種類も多種多様とあって食べ飽きない。季節の果物を使うシュネーバルはその時期にしか食べられない限定商品。

 うず高く積まれたシュネーバルを見上げる双子には、お菓子でできた山のように見えた。


「おぉ~っ! お菓子が雪崩になって落ちてきそうです」

「迫力満点のお菓子の山。こんな景色は見たことない」


 シュネーバルに興味津々の双子を前に、躍り出るはルールーさん。子供たちにお菓子を買ってあげる約束を果たすなら今である。


「よしっ! お姉さんが買ってあげよう。好きなのを選びたまえ!」

「「ほんとうに、いいんですかっ!」」

「約束しちゃんね。家族の分も選びんさいな♪」


 ルールーさんは双子から特大のありがとうを受け取る。いいなぁ。あたしも言われたい。あ、そうだ。あたしはアラクネートさんたちにプレゼントしよう。

 サマーバケーションではお世話になった。ヘラクレスの塔の景品のひとつにアラクネートさんたち職人に作ってもらい、蜘蛛の糸で編んだロングソックスを提供してもらったのだ。

 ちなみに、試供品という名目であたしとアルマの分のロングソックスも作ってもらった。

 ぴったりとフィットしながらも締め付け感がまったくなく、痒くもならない。通気性のよい厚手の生地は秋風を受けると足を涼しく、冬場の寒い時期には防寒具として機能する。

 ハイスペックロングソックスなのだ。絵柄も花柄でかわゆい。


 同じようにかわゆくて色違いのお菓子を摘み取ろうとする双子たちは、なにを使ったシュネーバルかと言われても味のイメージが湧かない。なので、色を見て綺麗なものから順に選んだ。

 ハズレを引くこともあるだろう。口に合わないこともあろう。それでも、彼女たちにとっては素敵な経験であり、体験であり、未知への冒険になる。新しいことを知るのはわくわくするものなのだっ!


 あっちへふらふら。こっちへふらふら。楽しく、真剣に悩む姿は見ていて微笑ましい。

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