もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 25
グリムとフィーアはペーシェに視線を戻し、なにごともなかったかのように振舞う。
「それは災難だったな。しっかし、遠目にもモンスターが飛び回ってるのが見えたぞ。あれが前に言ってたパレスミステリーの催し物? 騎士団でもモンスターが襲来したんじゃないかっててんやわんやだった」
護国を司る騎士団が飛んできたのは言うまでもない。そのへんはペーシェも対応したから驚きの事実ではない。
だから彼女はアトラクションの話しへフォーカスする。
「ですです。子供用のアトラクションも用意してますんで、騎士団のみなさんにも広報をよろしくお願いしますっ!」
「ちゃっかりしてるなぁ~。ま、あたしたちがそれまでにベルンに帰ってこれるかわからんけど」
「えっ、それはどういう?」
困った様子を示して、フィーアは質問に答えない。代わりにグリムが前へ出る。
「長期休暇を取ってるんです。我々も姉妹水入らずで、少し遠出しようという話しになりました。なのでベルンに住んでるソフィアの部屋に姉妹が集合する予定なんです。1人を除いて」
「それは素敵ですね! 家族水入らずで旅行なんて楽しそう。よい休日をお過ごし下さい。よければ今度、お土産話しを聞かせていただけると嬉しいです」
「えぇ、そうですね、必ず」
グリムは楽しそうに言葉を交わす。ちょっと羨ましいな。心が通じ合える誰かがいるっていうのは。
その努力をしてこなかったわっちが、こんなことを思うのは怠惰だからだろう。
最後に現れたのはアルマ・クローディアン。金髪ツインテふりふりフリルの少女が全力で土下座。土下座したいのはわっちのほうだ。でも事実を説明するとめっちゃ怒られるのが分かってるから、口が裂けても言えぬ。
「ご協力ありがとうございましたっ! このお礼は必ず!」
『いや、楽しい時間を過ごさせてもらって感謝してる。君はなにも気にしなくていい。でも、お礼というなら、君の情熱と魔法で世界中の人々に笑顔を届けてあげてほしい』
「なっ、なんて寛大なお心遣い。この御恩は忘れませんっ!」
やめてくれーーーーーーーーーーーーー。
忘れてくれーーーーーーーーーーーーー。
マッチポンプも破裂するーーーーーーー。
早く立ち去りてえーーーーーーーーーー。
罪悪感で吐き出しそう。張り付いた笑顔で筋肉痛になりそう。胃も痛くなってきた。めまいも感じる。一刻も早く家に帰りたい。
こんな純真無垢な少女に迷惑をかけたあげく、迷惑をかけた側がかけられた側に礼を言われるなんてあってはならない。
いっそ殺してくれえーーーーーーーー!
グリムとフィーアの目が冷たいものになってる。よし、今後、パレスミステリーが資金繰りで困ったら、わっちがそれとなく援助しよう。金ならいくらでもある。湯水のように支援しよう。




