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もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 23

 ひとまず脱水症状の危機は去った。

 次は彼女に身バレする危険の回避。最良なのはここから立ち去ること。だけど水を恵んでもらっておいて、恩を仇で返すなどできようはずがない。

 どうやら彼女たちもモンスターをハンティングして回ってるらしい。ならば回収した光る文字をあげれば喜ぶのではないだろうか。


「それは貴女のものでしょ? みんなに楽しんでもらいたいから、それは貴女が使ってちょうだい。それにあたしたち、実は運営側の人間で、その、なんていうか、見回りというか、ゲームをいい感じにするために、あぁと……、巡回してるだけなんだ…………」


 その原因はわっちにあるわけだが。


「あっ、そうだ!」


 黒髪美少女はなにか閃いたようだ。


「よかったら一緒に行動しない?」


 それ、一番選んではいけない選択肢。選んでほしくない選択肢。

 彼女は隣にいる少年、ジョセフを討伐ランキング1位に仕立て上げ、可能な限り被害を抑えようと考えてる。

 同時に、わっちのことを車椅子で移動する病弱な子と認識した。体力がないことからして、ジョセフを1位に、わっちを2位に仕上げることでポイントの獲得を圧縮しようと思ってる。

 だが、問題の1位は【アーディア・クレール】。なんとわっちなのだ。このまま同時進行でいけばわっちが1位になる。金一封などいらん。仮に1位になっても名乗り出ないつもりでいた。

 彼女と一緒だとそういうわけにもいかない。表彰する人間が目の前にいるとなると逃げられない。


 断ってここで逃げるか。きっとそれが最善手。

 だけど…………。


『よろしく、お願いします……』


 たまには誰かと一緒にいるのも、いいかもしれない。

 空になったペットボトルを握りしめて、わっちは柄にもないことを考えた。


 ♪ ♪ ♪


 空気()椅子を魔法で動かしてあっちへこっちへ。

 トゥポーンを見つけては討伐。鵺を見つけてはハンティング。巨大カレッジに巨大な影を落とすクラーケンをも一撃必殺。

 あっという間に楽しい時間が過ぎ去った。楽しい時間。こんなにわくわくした気持ちになるのはいつぶりだろう。

 そうだ、ソフィアの中にいて、彼と手を繋いで歩いた日以来だ。


 結局、1位はわっちこと、アーディア・クレール。2位はジョセフ・サニーデイ。答えを知ってる人がワンツーフィニッシュ。八百長甚だしいにもほどがある。3位に圧倒的差をつけての勝利。

 ちなみに、3位の人はパーティーを組んで1人に投げさせ、ポイントを収束させてたそうだ。ご愁傷様である。


「それでは、ランキング1位に輝いたアーディア・エクレールさんに金一封を贈呈いたしゃすっ! おめっ!」


 変なしゃべり方の女性から封筒が渡された。中身はベルン大学学園祭で使える割引券3000ピノ分。おまけとして、ベルン大学のマスコットキャラのストラップ。眼鏡をかけたデフォルメされたドラゴン。名前はウィドー。かわいくもなく、かっこよくもなく、絶妙に微妙なフォルムが人気らしい。

 人気、なのか……?


「いやー、楽しかったねー。もしかしてなんだけど、アーディアさんってグリムさんの姉妹なんですか?」


 ペーシェが敬語を使ってきた。出会った時は年下だと思われたらしい。わっちのマテリアルボディは低身長童顔妹キャラだから間違われても仕方ない。

 間違われたまま、他人のふりをして穏便に過ごそうかと思ったけど、一緒にモンスターをハントする中で速攻バレた。

 顔が姉妹と瓜二つ。まさか、と思いながらも、ペーシェは年下扱いしてしまったことに後ろめたさを感じ、事実確認をするのが遅くなった。

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