もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 22
はぁ……少し疲れたな。飲み物が欲しい。いかん。急いで家を出てきたからマイボトルを忘れてしまった。
小売店に行くわけにはいかない。かと言って学内に自販機はない。つまり学内の売店に行かなくてはならない。しかしわっちはコンビニに行くどころか、他人と対面で話したことがない。
まずい。人と話しただけで死ぬかもしれん。
いかん。想像しただけで心臓が破裂しそう。
どうしよう。脱水症状で死ぬか、人と話して死ぬか。
Die or dead!
「どうかした? 顔色が悪いみたいだけど、体調大丈夫?」
顔を上げるとわっちを心配する少年少女の顔があった。
セミロングの黒髪少女。片耳には紫金石のピアスが輝く。
癖っ毛の茶髪眼鏡は息絶え絶え。どうやら彼女に振り回されてるようだ。
大丈夫だと伝えようとして口を開けようとするも、疲労のせいか言葉が出ない。
否、他人としゃべるのが久しぶりすぎて声が出ない。
というか、黒髪少女はペーシェ・アダンじゃないか。彼女も事態の収拾のために東奔西走してるのか。そりゃそうだわな。
いかん。万が一にもわっちの正体がバレようものなら、彼女の雇い主として、ハッカーとして、ベルン国王直属秘匿騎士団の存在と正体がバレるかもしれない。
ここは穏便にやり過ごすのだ。
さて、しかし、こういう場合、どうやって穏便にやり過ごすのだ?
とかく声が出ないので合成音声で返答しよう。空気を固めて作った椅子を小さく振動させる。振動すると音が発生する。発声した音を人間が発する音と同じように、言葉として認識できるように振動させるのだ。
『初めまして。わっちはアーディア・クレール。楽しそうなアトラクションが開催されてたので参加しました。今は少し疲れたので休憩中です。差し支えなければお水を一杯いただけないでしょうか?』
「まさかの合成音声! あ、えっと、水なら持ち合わせのがあるからあげるね。全部飲んじゃっていいから」
『ありがとうございます』
ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ!
ふぅ、一気に飲み干してしまった。こんなにもおいしい水を飲んだのは初めてだ。世界中のアスリートたちはおいしい水を飲むために、バカみたいに動き回ってるに違いない。




