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もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 12

 ところ変わってベルン大学。教育を受ける場として世界標準の施設。専門的な建物が集中的に並ぶ姿はとても新鮮に感じた。

 グレンツェンは街全体が大学といった様相。ここはこじんまりとした印象と同時に、濃密に集中されてるように思える。

 大学だから行きかう人のほとんどが20歳前後の若者ばかり。十代前半の少女も、60近くのおじいちゃんの姿も少ない。グレンツェンから学びを始めたアルマとしては、極めて奇妙且つ、言い方は悪いが排他的に見える。


 物珍しくする双子を物珍しく見るルールーさんが双子の顔をのぞきこんだ。


「グレンツェンは街全体が学びの場って感じっしょ。だからベルン大学みたいな環境は初めてだよね。孕子ちゃんと孕伽ちゃんもこんゆうとこ初めて?」

「初めてです。こんなにおっきくてごちごちしてる建物は初めて見ました」

「人間がいっぱいだ。動物が全然いない。自然が少ない」

「孕伽ちゃんは注目するところが独特じゃん。芸術家としてのセンス有りッ!


 実際、孕伽ちゃんは舞に楽器に歌にと、芸事に関して隙が無い。無論、絵画もできる。彼女の好きなものは水墨画。最近は岩絵の具を用いた写実的絵画を勉強してるという。

 今日もベルン公園に立ち寄った際、ハティさんの神気にあてられた動物たちが集まり、ハティさんの演奏とともに歌を歌ったそうな。ゲリラ演舞やってるってSNSで超バズってた。


「アルマにゃんはどう?」

「アルマにゃん!? ええと……グレンツェンと似た匂いがしますが、雰囲気が全然違いますね。フレッシュで勢いがある感じです。青い春してます」

「ここ見てからグレンツェンを思い出したら、グレンツェンってどういうところに見えゆー?」

「花の都ってだけあって、華やかで開けた印象です。自由人が多いせいか親しみやすくて話しやすいです。カフェテラスで相席して、お話ししたらもう友達です」

「すっげぇフランク! いいね、そういうの。さて、そろそろゼミに到着だ。アーディさんはプログラミング言語の変換よろっす。アルマにゃんは魔法陣の再構築よろにゃん。孕子ちゃんと孕伽ちゃんにはモンスターを見てもらおうっ!」

「「もんすたー?」」


 異世界人の双子は今なにをしてるのかを理解してない。彼女たちはハティさんと一緒に異国に遊びにきた。そのくらいの認識である。

 ルールーさんからすれば、子供向け版ゴッドブレスのクリーチャーデザインが子供に受けるかどうかを見たくて招待したところがある。デフォルメしたクリーチャーとはいえ、大人の、しかもデザイン学科という特殊性癖(バイアス)の強い人種が納得して作った創作物が一般人に納得されるか疑問を持った。

 なので実際に子供に見てもらって、彼女たちの反応を見ようと思ってるのだ。

 そうとも知らないアルマは特になにも考えることなく双子を連れてきた。彼女たちは異世界人。しかも魔族。さらに言えばかなり特殊な文化の強い土地柄で生まれた子供。


 伝承に語られる妖怪を本気で信じるピュアガールズ。だからクリーチャーを光学系魔法で立体的に映し出されたなら、


「ぎいいいええええええええええええええええッ!」


 と、叫んでライブラから刀を取り出し、自己防衛本能に従って本気で斬りかかるのは当然の帰結。

 姉の孕子ちゃんが妹と大事なハティさんを護るため、達人も天晴と太鼓判を打つほどの見事な剣技で幻像を滅多斬りにする。

 幻像なので斬れないのだが。


「落ち着いてーーーーッ! 幻だから! 襲ってこないから大丈夫!」


 ルールーさんが必死に止めに入ろうにも、真剣を持った少女に近づけるわけがない。

 ここはハティさんの出番だ!


「孕子、大丈夫。これは幻。だから危険はない。真剣をしまって深呼吸しよう」


 大きな腕に抱きこまれた少女は真剣を収めて呼吸を整えた。


「てっきり魔物が現れたのかと。幻なら初めからそうおっしゃってくださればいいのに」


 ふてくされるのも無理はない。ルールーさんはなんの説明もなく、いきなりモンスターを繰り出したのだから焦りもする。孕子ちゃんは悪くない。ルールーさんが全部悪い。


「ご、ごめん……。まさかここまでやべえ拒否反応されるとは思わんくて。あとでお菓子買ったげるから許してちょ?」

「お、お菓子……シャングリラのみんなの分も買っていただけるなら、まぁ……」


 優しい!

 家族のことを考えて行動する孕子ちゃんはきっといいお嫁さんになれるだろう。アルマもあとでなにかお菓子を買ってあげよう。

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