もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 7
もう勝った気でいるアルマの隣で、ペーシェさんは難しい顔をした。
いったいなんの不安があるというのか。ペーシェさんだってヘラクレスの塔は傑作だと言ったじゃないか。
「そりゃ、明鏡止水のステージはチャレンジャーの身体能力と同等の身体能力をゴーレムに与えるうえ、武器は二刀流で、ゴーレムだから人間離れした関節の動きが可能なわけだけど」
「聞いてるだけで勝てる要素ゼロなんだけど……」
ジョセフさんの意見はごもっとも。ですがもちろん、全てのステージには勝利への方程式が設けられてるのですよっ!
「明鏡止水のゴーレムは100人斬りならぬ、刀100本斬り。天井から落下して補充される刀を100本叩き折って、こちらの刃を相手に突き刺せば勝利です。単純明快なんですよ。で、ステージの名前になってる明鏡止水っていうのは、澄み渡った水面のように安心した心の様子を意味します。つまり冷静であれば余裕でクリアできます。くわえて、垂れ幕に掛かってる『我、汝の心の鏡也』ってのが、自分の身体能力がそのままゴーレムの身体能力を意味します」
「つまり、ライラさんみたいな超人なら、ゴーレムも超人的な身体能力になる。逆に僕のような一般人だと、ゴーレムの動きも一般人並みになる、と?」
「そういうことです」
「それじゃあ、冷静にっていうのはどういうこと?」
「実はチャレンジャー側の武器がゴーレムの刀に触れると刀が折れる仕様になってます」
「――――てことは、わざわざこっちから攻撃する必要がないんじゃ?」
「おっしゃる通りです。攻撃を受ければいいんですよ。しかしまぁ、ものすごい剣幕で、怒涛の勢いで襲い掛かってくる鎧武者の攻撃を冷静に対処できるかどうかがポイントなんですけどね。絶対にパニックになるでしょ。人間の本能的に、攻撃されると防御するか、冷静でないと滅茶苦茶な攻撃をしますからね。武器を持ったならなおさら」
「……………………」
楽しそうに話すペーシェさんを見て、彼は『この人、めっちゃ意地悪な性格してる』と思った。アルマにはジョセフさんの心の声が聞こえた気がした。もしやすると、アルマは明鏡止水の境地に至ったのかもしれないっ!
なわけないか。




