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あんな子だけど、仲良くしてね

アルマは和柄ピンクのミニスカふりふりフリルが大好きな女の子です。

しかし成人もしたし、背丈が低めでまだまだ子供っぽい容姿とはいえ、心は大人になろうとしています。

すると大手を振ってフリルを着るのはどうかなぁ、と思っている年頃です。

子供から大人の中間って何かと悩むものです。子供のままでいたいという思いと大人にならざるを得ない現実とのギャップで悶々します。彼らも悶々しながら青春していきます。

暖かく見守っていてあげて下さい。




以下、主観【アルマ・クローディアン】

 屠殺も済んで血も飲んで、ひと息つくのにお願いされてたしゃぼん玉の準備ができました。

 こちらとしては試験ができるとあって大歓迎。キッチンのメンバーも、本番中は遊びに行くほど時間もないということで大喜び。

 マーリンさんと出会って歩みが進んだ。ベレッタさんとアーディさんの厚意で加速した。シェリーさんやハティさん、みんながいてくれたからここまでこれた。感謝してもし足りない。


 野郎どもに準備をさせてる間に、まずはきちんと挨拶周りに行かなくては。

 よく顔を見せる人たちはともかく、お世話になったのに顔を見せに行ってない人がいる。


「こんにちは、アーディさん。もっと早くお礼に行きたかったのですけど日が合わなくて。改めまして、アルマ・クローディアンです。職人さんを紹介していただき、ありがとうございました。本当に助かりました」


 お酒を片手に1人の時間を楽しむナイスガイ。魔導工学の第一人者。今度、腰を据えて語り合いたい。


「いやいや、こちらこそ。工房の職人たちも面白い仕事ができてよかったって喜んでたよ。それにベレッタも君を気に入っているようで良かった」

義妹(いもうと)さん思いのいいお兄さんなんですね」

「まぁね。同じ修道院育ちだから。これからもベレッタと仲良くしてやってくれ。それで、あっちで集まってやってるのは君が企画した空中散歩ってやつか。ベレッタから聞いてるよ。せっかくだから体験させてもらえるかな?」

「もちろんですとも!」


 二つ返事で頷いて、振り輪を握って空を仰ぐ。

 1人、また1人、くるくるふわふわ。宙に浮かんで笑顔が咲いた。

 シェリーさんもキキちゃんたちも、ビール樽を担いで前祝いに参加しに来た工房の面々も空へふわり。ふわりふわ~りふわふわり。


「いやぁ~、前に遊ばせてもらった時は低空飛行だったけど、やっぱり高いところを飛ぶのはいいねぇ。本番は屋外なんでしょ。絶対遊びにいくからね!」


 ミレナさん大満足の笑顔。


「まさか私が咄嗟に使った魔法がここまで昇華されるとは思わなかったな。さすがアルマだ。それと、申し訳ないんだけど、やっぱり本番では仕事が入ってさ。手伝いには行けそうにないんだ。ごめんな」


 がびーん!

 分かってはいたけどやっぱりショック。シェリーさんと一緒に空中散歩の運営をしたかった。

 続いてスパルタコさんが飛びついた。


「ハンヤさんのSNSで見たやつだコレ。ハティさんとシェアハウスしてる子だったんだ。もしよかったら、俺たちのSNSにもアップしていい? 宣伝するからさ」

「宣伝してもらえるなら是非もありません。なにとぞよろしくお願いします」


 なにせ異世界人のアルマ・クローディアン。機械を用いた宣伝などできようはずもない。

 宣伝と言えば、ライラックたちにTシャツのデザインを頼んでたんだった。

 思い出すことを察知したのか、ライラックが楽しそうな笑顔とともに現れた。


「凄いよアルマ。ここまで作りこんでただなんて。って、メンバーなのに全然手伝えなくてごめんね。でもでも、看板(フライヤー)と宣伝用の衣装を作ったんだよ。見てみて!」


 尊敬する大人たちに褒められるのは気分がいいなぁ。

 認められるってのはいいもんだ。ついつい顔がほころんでしまう。背伸びをして大人ぶってる分、こういう時は子供に戻ってしまうなぁ。

 きっとあとで暁さんにもいい子いい子してもらえるだろう。それが何より嬉しいことなのだ。

 あの人に手を差し伸べられて、ぎゅっと抱きしめてもらったその日から。


 他のメンバーもそれぞれにできることをして努力してくれている。

 まだ言い争いが目立つクソ野郎共も、シェリーさんの喝のおかげか大人しくしてくれていた。

 ガールズはタイトルがガーリーなだけあって積極的に参加してくれる。しっかり者のライラックを筆頭に、女子力を全力で使ってくれた。


 悦に入るアルマは今にも宙に浮きそうな心地。さぁ地面に足をつけて、ライラックが自慢する衣装を見せてもらおう。

 女子力のパワーたるや如何に。女子力を……全力に振り切って針がぶっ壊れたか?

 いや、多分これがこの国の感性というやつなのだろう。なのだろうけど、これを着るのは、すんごい嫌だ。


「どうこれ。ハンヤさんに相談して最新のトレンドとしゃぼん玉を合わせてみたの。世界中のセレブやモデルがランウェイを歩くっていうやつを参考にしたんだ。カラフルでかわいくない?」


 かわいくない!

 NO PRETTY!

 ひいき目に見てちんどん屋にしか見えないんですけど!?


 水玉模様のジャケットにカラフルな丸いボールがくっついてる。しゃぼん玉をイメージしたのか。アルマにはそう見えない。どっかの異星人にしか見えない。

 極めつけは頭。頭の帽子らしき何か。口から顔を出してるパンダの着ぐるみのほうが1000万倍かわいいわ!

 でっかいマシュマロを被ってるようにしか見えないんですけど。

 コレを着て人前にでるの?

 断固断るッ!


 死ぬほど嫌な顔をしてると、どこからともなくシェリーさんの声が聞こえた。


「お、ついにできたのか? ハンヤさんと私で大枠のデザインを決めて、みんなであれこれしていった衣装なんだ。かわいいだろ?」

「おい男子ちょっとこっち来いやぁーッ!」


 満面の笑みを浮かべるシェリーさんへの返答を保留。場所を変えて男子を呼びつけて胸倉を掴んだ。

 なんでストップに入らなかったんだ。

 この衣装はお前らも着るんだろうが。

 これでいいのか。これでいいのかお前らは。

 いいわけないだろふざけるな!


「いや、スイッチの入ったライラックを止められなくて。男たちも着るのかって止めるには止めたけど、ガーリー路線で行くって聞かなくってさぁ」

「普通にTシャツでよかったじゃん。てかTシャツのデザインを決めろって言ったよね。なんで余計なことしてんの?」

「止めには入ったけど、ライラックは頑固で一度こうと決めたら人の意見なんか聞かないんだよ。というか、アルマも賛成なんじゃなかったのかい? アルマが凄いものを作ってるんだから、こっちも気合入れて相応の物を作るんだって意気込んでいたようだけど。アルマも期待しているに違いないって」


 んなわけあるかぁぁぁあああああッ!

 誰がマシュマロを被れって言ったし!

 そんなゆるすぎてふよんふよんしてる物を着れるのは、キキちゃんやマーガレットちゃんくらいの小さい女の子だけだってーの!

 まがりなりにも我々は成人してるんだよ。

 恥ずかしくて着れないっつーの!


「それを言ったらアルマの普段着だってピンクのふりふりフリルじゃん。大差ないだろ」

「大差あるわ! てか、アルマは両腕が無いから着れる服が限られてるの。柄や色は趣味だけど。ライラックが作ったアレはガーリー&ミステリアス。アルマのは大人かわいいなの」

「「嘘だろ…………?」」


 この感性が分からないダメダメ男子はとりあえず首を絞めておしおきよ。

 はぁ~、やっぱりこいつらと会話してるとストレスが溜まっていけないなぁ。

 こんな時はセチアさんから貰ったアロマキャンドルの香りを嗅いで落ち着こう。

 わざわざアルマのために、大好きな金木犀の香りを閉じ込めたアロマキャンドル。

 火を焚いてなくても、鼻に近づけるだけで香る華やかな色気が心を安らかにしてくれる。


「まぁ、俺たちは市販のTシャツを着るから、別にデザインがどうとかいいんだけどな。女の子が良ければなんでも」

「だな」


 あぁん!?

 こいつら他人事みたいに何を言っちゃってんの?

 バカなのこいつら。いや、やっぱりバカだ。絞め殺してやる。

 イライラマックスビートのアルマの殺気を感知してか、暁さんがやってきた。


「おいおい、そんなに首を締めたら死んじゃうぞ。何の話しをしてるんだ?」

「うぅ、暁さぁん。こいつらがバカでバカでバカなんですぅ!」

「なるほどな。感性のぶっ飛んだ幼馴染を止められなかった上、自分たちは安全なところにいるものだから、他人事としてチームメイトをほったらかしにしたというわけか。それは災難だったな」

「やっぱりハティさんの言葉足らずの原因はあなたですね。今のでよくわかりました」


 遠くからエマさんの憂いを帯びた声が聞こえた。

 と同時に、イッシュが言い訳を始める。


「ゲホッ。仕方ないだろう。ライラックだけならともかく、シェリーさんとハンヤさんにまで推されたら水なんか差せないって。特に俺とネーディアはシェリーさんに頭が上がらないし」


 役立たずには往復ビンタの刑がお似合いよ!


「うるさい、役立たずは黙ってろ。エマさんも何とか言ってやって下さいよぅ。かわいくないって」

「いや、そんな、直接的に人の心が傷つきそうなことを言うのはちょっと」


 いやぁーーーーーー絶対着たくない。

 着たくないのに、ライラックがキラキラした眼差しでこっちを見てる。

 満面の笑みを浮かべてる。

 どうしようどうしよう。

 こっちに来るし。こっち来ないで!


「それでそれで、どうどうかわいいでしょ?」

「え、全然かわいくない。少なくともアルマの感性には響かない」


 露骨にショックを受けるライラック。

 そりゃそうだろう。面と向かって否定されたのだから。でもアルマはお世辞とか言わないタイプ。思ったことは直球だろうと変化球だろうとミットに放る。

 そんなゴテゴテしたやつより、普通にスッキリしたデザインの方がいい。

 尖ったデザインはその筋の変わり者には目に留まるかもしれない。変わり者にはね!

 一般人には冷ややかな視線を向けられるに違いない。そんなものなど気にするなと、強固な精神で胸を張る人もいるだろう。

 だが、趣味の合わない物は魔法も服も身に着けないことにしてるのです。

 趣味に合わない魔法に出会ったことないけどね!


 わりと頑固なライラックはめげない、折れない、諦めない。


「いやいや、これだってかわいいじゃん。ほら見てあの3人。これで街を練り歩いたら凄い宣伝になるよ?」

「宣伝云々の前に着ないから。ダサいから」

「そんなことないって。ほらこれ、元のデザインになったやつなんだけど、尖った衣装でカッコいいでしょ。このままだとしゃぼん玉っぽくないからって、丸くしたら超かわいくできたんだよ」

「尖ったデザインっていうか、ナニコレ三角錐のトゲが体中に生えてるんだけど。これがグレンツェンで流行ってるの? だとしたら真っ裸の方がマシなんですけど」

「グレンツェンでは流行ってないし世界中のどこにも流行ってないよ。あくまでファッションショーだから、これは」


 ファッションショーならアリなのか、これ!?


「そもそも参考にするものが間違ってるのでは? 泣きべそかかれてもなぁ。まぁアルマが着ないならいいんだけど。あれ、どこかで聞いたフレーズ」

「え? アルマはこれ、着ないけど」

「は?」


 なん、だとっ!?


「これは街を練り歩いて宣伝をするマーガレットとキキちゃん、ヤヤちゃん用に作ったもので、私たちはTシャツだよ。アルマの好きなピンク地にカラフルなしゃぼん玉をあしらったデザインなんだけど、どうかな」

「あぁー…………スゴクカワイイトオモウヨ。ドッチモ。おい男子」


 振り返ると、呆れて諦めてるバカ面が2つ。


「いや、お前が勝手に勘違いしただけだろ。言おうと思ったのに黙れって言ったのお前だろ」


 彼らの脇からしゃぼん玉コーデのキキちゃん登場。


「見てみてアルマお姉ちゃん。歩くとふよんふよんしてかわいいでしょー!」

「うん。すっごくかわいい!」


 めっちゃ似合うわー。まるでしゃぼん玉のフェアリー。

 似合ってると褒めると、少女の背後の唐変木が言語を喋り出した。


「お、お前、さっき自分がなんて言って

「覚えてねぇなぁ。昔のことなんざよぉ。かわいい子供たちがこんなにはしゃいでるのに、かわいくないわけないじゃない♪」

「だよねだよね! アルマなら分かってくれるって信じてたよ。男共ったらこの良さが分からないんだから。ほんと、しょうがないよねぇ!」

「だねぇ!」


 その後、彼らは厨房のマーリンさんのところへ走り、ヤケ酒を注文した。

 ヤケ酒という酒はないからひたすらアツアツのヒレ酒を飲み続けたという。




~~~おまけ小話『アルマの友達』~~~


暁「いやぁ、あたしと出会う前のアルマはちょっと荒んだ生活を送ってたから、時々、素が出ちゃうんだなぁ。そこがまたかわいいところなんだけど」


エマ「いやあの、普通に怖かったんですけど。ちょっと印象が変わりました」


暁「それも含めて仲良くしてやってくれると嬉しいよ。あっはっはっはっはっ!」


エマ「あ……はい…………」


ライラック「メリアローザでのアルマってどんな雰囲気なんですか? グレンツェンにいる時とおんなじで、魔法魔法言ってはしゃいでるんですか?」


暁「魔法魔法言ってはしゃいでるぞ。最近は魔力を保存しておける容器を開発してな。それの小型化に取り組んでた。とりあえずの完成を見たから実地試験をしてるところだ。まぁそれに限らず、大人に混じってよく魔法魔法言ってるよ。逆に言えば、アルマの知識は既に子供のそれではないから、同年代の子らと話しが合いづらい。こうしてライラックたちと一緒に楽しく過ごせてるところを見て、あたしはもう感涙ものだ」


ライラック「あぁ~、アルマって結構大人っぽいところがあると思ったら、そういう背景があったんですね。見た目は私より年下にしか見えないのに」


アルマ「背丈と体形だけで判断してはいけないという模範」


暁「真顔で正論を言われると怖いな」


シェリー「逆に同年代の友達がいるのかというのが疑問だな。そもそも同年代が少ない?」


暁「同年代の子が少ないわけじゃないです。ただ、子供たちも大人に混じって仕事してるんで、関わる機会がどうしても少ないですね。番頭の紫とは仲がいいですよ」


アルマ「だいたい風呂場で仕事してますからね。1人で行った時に髪を洗ってもらうんですよ。魔力に形を与えて洗えないこともないんですけど、くつろぎに行ってるのに魔力の鍛錬をしてるみたいでもやっとするんですよね」


ライラック「え~? そ~なのぉ~♪ 今度髪洗いに行ったげよっか? 髪型変えてあげようか?」


ウォルフ「あたしも髪を~洗いに行きたいな~♪ 髪型教えてあげよっか?」


暁「髪をいじって遊びたいだけのやつ! あたしだっていじらせてもらったことないのに!」

人は見た目が9割。

なぜならパッと見で真の性格など分からない。判断基準が見た目しかないからです。

あと、わりと声質も参考にされているみたいです。


そんなこんなでポップでガーリーな衣装をアルマは断りました。

イメージとしてはきゃりー●みゅ●みゅみたいなステージ衣装です。

街中で着るには純度100%の鋼の心臓が必要です。

しかし場に合った衣装であれば、逆にすごーいと驚かれるもんです。生肉ドレスとかですね。

きっとキキたちと同じ年齢だったら、しゃぼんの服を恥ずかしがりながらも着ていたんじゃないかと思います。多分。

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