もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 5
5つ目は我らが居城・ヘラクレスの塔。なのだが、サイズが大きすぎてここでは再現不可。なので、紙面に起こした設計図を光学系魔法で立体にしてもらうことになりました。
ポドルギィさんが取り出した設計図は5枚。ヘラクレスの塔は5層構想。1、2、3、5階層は挑戦者が入場する建物の中に部屋として存在し、4層のみ、別の場所に建造した建物へ転移して遊んでもらう。
ちなみに、テレポートに使う魔法陣はメリアローザのものを拝借します。
ポドルギィさんは1枚目の設計図を広げて光学系魔法で立体におこす。
「1つ目の音階段は音に反応して動く床だね。オーダー通り、全体の雰囲気はアステカ遺跡のような、石に彫刻を施したデザインだよ」
「見た目と雰囲気が抜群ですね。壁の五線譜は注文通りになってますよね?」
「もちろん。これが第一階層を突破するのに必要なヒントだからね。だけど、正直言って、これに気付いたところでクリアできるかどうか怪しい気もするのだが」
ポドルギィさんは困ったような表情を見せて発案者のペーシェさんに視線を合わせた。
共に彼女を見たジョセフさんが第一階層の概要を聞く。
「奇妙な遺跡の姿だけど、ここはどんなギミックが仕掛けられてるの?」
聞かれ、ペーシェさんは設計図を指差して答える。
「スタート地点とゴールの間に巨大な穴がある。これが【第一関門・音階段】。穴には橋の代わりに動く石の床が配置されてます。動く床は音階の種類と同じ5種類のマークが刻んであります。ステージから発信される音に反応して光り、規則的な動きをします。音によって次々に光る床が変わり、床と床がすれ違うように動きます。これに飛び乗って、その場にいる全員が乗ってから5回、光る床を踏み続けられればクリアです」
面白そう、とつぶやいて、ルールーさんが質問を投げる。
「石の床のサイズがわかんないんだけど、ひとつの床に全員が飛び乗って、そこから5回踏み続ける、でもクリアなの?」
「それでも大丈夫です。でもサイズ的に5人一度にってのは厳しい仕様です。2人までなら余裕を持って乗れます。あと、踏み外して穴に落ちたり、一定以上光らない床に居続けた場合、その人はリタイアということで強制転送されます」
「なるほど。理屈は簡単だけど、いざその場で飛び乗るとなると緊張して足を踏み外したり、躊躇して取り残されてリタイアしそうだな」
続いて疑問を浮かべたのはジョセフさん。
「その場にいる全員ってことは、もしかして1人で挑戦したら、簡単にクリアするのでは?」
「勘がいいですね。おっしゃる通り、1人でなら最速でクリアです。でもその後のステージは基本的に人数が多い方が有利なので、ソロチャレンジはおすすめできません」
「そりゃそうだよね。5人まで挑戦可能なんだから、5人揃ってクリアし続けるほうがいいよね」
彼の言葉の最後に、ギミックを知ってるポドルギィさんが秘密をぽろり。
「製作者サイドはヘラクレスの塔に挑戦できないって契約だからしゃべっちゃうんだが、実はこのステージには裏技が用意されてるんだよな?」
「そうです。床は動きを止めてからでないと次の指示を受け付けない仕様になってます。ステージから床を動かすための音が発信されるんですが、発信されるまでに数秒の時間があります。ので、その間にチャレンジャーが任意の音階を発声することで、動く床を操作可能なのです」
得意満面のペーシェさんに、謎を解き明かしたジョセフさんの張りのある声が響く。
「つまり、音を割り込ませることで、好きな床を動かせるんだ。そうなると攻略難易度がかなり低くなるね」
ここでルールーさんが待ったをかけた。
「でも飛び乗らなきゃいけないのには変わりないじゃん?」
「たしかにそうです。でも、5種類の床をランダムに踏まされるよりはずっと簡単なはずですよ。5人がひとつずつの床に飛び乗って、そこから5回居続けるということは、最速で10回はジャンプしなくてはいけません。例えば、1・5・4・3・5・2・4・2・1・3というランダムで床が動くとします。でもチャレンジャー側が床を操作できるなら、1・2・1・2・1・2・1・2・1・2と、同じ床を選んで同じように飛べばいいだけです。次になにがくるか分かって、何度も挑戦できるなら、これってかなり簡単だと思いませんか?」
「なるほど! たしかに全然違うわ。壁に音階が描かれてて、次になにが来るのか覚えるよりはるかに楽!」
ジョセフさん、賢いな。一を聞いただけで十を理解してしまうとは。
そしてなにより、こんな面白ギミックを考えてしまうペーシェさん、マジかっけーっす!




