もんすたー・ぱぱぱぱにっく! 3
4人の術者が四方でひとつの魔法を唱える。魔法陣を見ただけでわかる。わくわくとゆるふわと夢と希望を詰め込んだお菓子の家。
積み上がった魔法が造形された。白を基調にしたハイキートーンの家。ボックスクッキーの壁。キャンディーのステンドグラス。板チョコの扉。ウェハースの屋根にはホイップクリームがふんだんに塗りたくられてる。
どこもかしこもお菓子お菓子お菓子。ヤヤちゃんが見たら一瞬でかぶりつくに違いない。今日は双子は暁さんに連れられてお出かけ中。危うく双子を絶望させてしまうところだった。
素晴らしい見た目に歓声があがる。我々だけではない。道行く人たちからも感嘆のため息が漏れた。そりゃそうだ。本気の大人が作ったお菓子の家。一切の妥協のない情熱の結晶。
素晴らしくないわけがないっ!
巨大な板チョコの扉をくぐると、ゆるふわであまあまな空間がこんにちは。エキュルイュは建造物のみの担当ということでお菓子の国の住人はまだいない。
いないけど、いなくともわくわくするに十分な空気感が漂ってる。ここでお菓子の国の住人と一緒にお菓子作りができるのだ。世の子供たちはそれはもうおおはしゃぎするに違いない。
「最高だな。子供じゃなくたってはしゃぎたくなるわ!」
ルールーさんのテンションに拍車がかかる。
「ゆるふわ……ガーリー…………」
どういうわけかペーシェさんのテンションが低い。
昨日、メリアローザにワープして疲れたのだろう。多分。
「この扉の先がカフェテラスに続いてるんですよね。開けてもいいですか?」
ジョセフさんもあんまり興味なさそう。
「もちろんだとも。実際に食事をするのはベルン公園だから、建造部分はアトラクションとスイーツを販売する部分だけだけどね。その代わり、オープンテラス方式にしてあるよ。通常の店舗では難しくても、魔法で造形するクリスタルパレスならお手の物さ」
ポドルギィさんは得意満面に扉を開けた。光の先にはシルヴァさんが立つであろうカウンターがある。スイーツが入る宝箱もゆるふわであまあま。
無意識によだれが出てしまう。心なしかお腹が空いてきた気さえする。
「お菓子の国で遊んだあとにおいしいスイーツが待ち構えてるなんて、一生の思い出になること間違いなしですね!」
「子供に遊ばせといて、最後にしっかりと親の財布を開かせようとする流れ。我ながらえげつない」
「ペーシェさん、そこはオブラートに包んでください」
包み紙にくるんでゴミ箱にナイスシュートしていただきたい。




