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宝石の輝きの先に 65

~おまけ小話『宝石魔法』~


カルティカ「で、宝石魔法はどうだったん?」


アルマ「ティカは一応、宝石魔法の実証実験のお手伝いで来たんだからもっと興味持てや」


フィアナ「ま、まぁまぁ、そう言わずに、ひとまず検証できた結果を共有しましょう」


アルマ「ぐ、ぐぬぬっ。フィアナさんがそうおっしゃるなら。まずはメリットから。ざっくばらんに言うと


【魔力消費量が同一の魔法を発動させるより少なく済む】

【魔術師としての力量が低く、宝石に付与された魔法が己の力量より高くても魔法を発動させられる】

【魔力の伝達効率と伝達速度が速く、魔術回路を魔力で満たすことで即発動できる】

【自分の適正以外の属性の魔法でも行使できる】

【未習熟の魔法でも宝石魔法に付与された魔法を発動できる】

【宝石魔法に付与されたマナと同一のマナを持ち、同属性の魔法だと他属性のマナを持つ人より威力が上がる】


こんなところかな。ひとつずついこう。魔力消費量が少なくて済むと、魔術師の継続戦闘能力を飛躍的に上げてくれる。これは魔獣討伐においても、冒険者がモンスターと戦うに際しても特筆すべきメリットだと思う」


カルティカ「だね。魔力を節約できてなおかつ、高威力の魔法を連発できるメリットは大きい。触媒としての機能を同時に果たしてるからかな?」


アルマ「その通り。マジックアイテムとしてだけでなく、魔法の触媒として、魔法の威力を高める効果を持っているのだ!」


ジャック「継続戦闘能力の高さが確実なものになっただけで、国際魔術協会から研究費が落ちますね。魔獣を倒せるだけの威力も十分でした」


カルティカ「消費魔力の優秀さは以前から知られてたよね。今回の実験で消費魔力の抑制が確定したのは大きい。次の魔術師の力量が低くても、実力以上の魔法を行使できる点も宝石魔法をはじめとしたマジックアイテムの利点だね」


フィアナ「おっしゃる通りです。魔術師だけでなく、戦士職の方が魔術師でも習得に苦労するような魔法を行使できるのは、宝石魔法をおいてほかにありません」


(ホウ)「俺は獣人で放出系魔法が苦手なんだが、宝石魔法を使えば魔術師さながらの魔法が使えるのには驚かされたな。戦闘において手札が多いに越したことはない。ぜひとももっとたくさんの宝石魔法を作ってほしいもんだ」


アルマ「そりゃあもうわんさか作っちゃいますよ。でも宝石自体が貴重で高価なので、できるだけ安価に収めたいですね。花崗岩や橄欖石を加工して宝石魔法に耐えうる素材にしたいもんです」


カルティカ「宝石魔法とお金は切っても切れない関係だもんね。3つ目のメリットも戦闘において優れた結果を約束してくれそう」


アルマ「魔法を発動させる1秒2秒が生死を分けることなんてざらだからね。即発動するのはマジックアイテムのいいところ。特に宝石魔法は紙や金属を媒体にしたマジックアイテムに比べて、魔力を流して発動する速さが別格」


エイリオス「わしなんか連射しすぎてファイヤーボールがビームみたいになったぞい」


カルティカ「い、いったいどんな速さで連射したらそうなるんですか…………」


シェリー「自分の適正以外の魔法を使ったのは久しぶりだった。それどころか、他属性の中級以上の魔法も行使できるなんて夢にも思わなかったな」


ラダ「シェリー騎士団長は戦士職なうえ、ほとんど土属性一辺倒、防御偏重の魔法ですよね。それが宝石魔法をくわえることで攻撃や補助も行えるようになるとは。まさに鬼に金棒ですね」


シェリー「とはいえ、使えるのと使いこなせるのとでは話しが全く違う。使うなら相当な訓練が必要になってくる。無論、手札が多くなるに越したことはない。本来、苦手な魔法を使う時は無駄に魔力を消費してしまうものだ。しかし宝石魔法はその逆。省魔力で撃てるのだから、宝石魔法の付加価値は高いな」


ディア「苦手な属性魔法を訓練すれば、対戦相手がどんなことを考えて魔法を使おうとしてるのかを考えて行動できるようになるかもしれません。相手の気持ちになって魔法を考えることを、体験を通して理解できることは大いに価値があります」


ノルン「未習熟の魔法でも、宝石魔法に付与されてるなら使えるということは、治癒系魔法のヒールなども一般人が使うことが可能ということですか?」


アルマ「理論上は可能です。フィアナさんとしても、身を護るためや治癒系の魔法を優先的に研究していくそうです。治癒系の回復(ヒール)消毒(クリア)の宝石魔法は絶対に完成させたいですね。オートファジーの魔法も付与したいですねっ!」


マリア「オートファジーの魔法? ってなんですか? 聞いたことない魔法ですが、メジャーなものなのですか?」


バスト「あれはよい魔法であるな。原初の魔法、太古の魔法(オールドマジック)に連なるものよ。ほれ、これがオートファジーの魔法だ」


マリア「わぁ~、なんだか体がぽかぽかします。とっても温かい魔法ですね」


バスト「ホメオスタシスを活性化してくれるでな。体調不良の時に使うとよいぞ。ただし、魔法の性格上、己自身に魔法をかけることはできぬがな」


シェリー「ちょっと待て! バスト、お前、オートファジーの魔法が使えるのか!?」


バスト「うむ。オールドマジック。懐かしいのう。昔はオールドマジックしかなかったというのに、時代は変わったものよのう」


シェリー「そ、そうか。もしもオートファジーの魔法を宝石に付与する時は手伝ってやってくれ」


バスト「うむ。人間のためになるなら是非もない。して、メリットがあるということはデメリットもあろう。プリマが宝石ダイブしてしまったアレのように」


カルティカ「宝石ダイブ?」


アルマ「宝石の上でごろごろしようとしたら、魔力が流れて宝石魔法が暴発した。ちなみにデメリットは、


【宝石自体が高価】

【熟達した魔術師の魔法には及ばない】

【宝石魔法の性能以上の魔法を放てない】

【魔力の伝達効率が高すぎるため、魔力を満たした瞬間に発動してしまう。一般的な魔術師のように溜めや複数同時発動ができない】

【複合的な魔法の発動ができない。宝石魔法を2種類同時発動しても、2種類の魔法を融合させる複合魔法を形成できない】

【魔力を流さないと発動しないため、自動発動系の魔法の場合は常に魔力を流し続ける必要がある】

【安易に魔法が扱えるため、魔術師としての魔法の修練を怠る可能性がある】

【マナが一致しない魔法の場合、マナが一致する魔法に比べて威力が落ちる】

【宝石魔法に魔法を付与する技術が高度】


と、こんなところかな」


カルティカ「けっこうあるのね。で、プリマちゃんは無事だったの? てか、ブラードがプリマちゃんを検診してたのってそれが原因か」


ジャック「プリマちゃんに異常がなくて安心しました。ただ、宝石魔法は魔力の伝達効率がよすぎて、すぐに魔力が満たしやすく即発動してしまうので、保管は要注意ですね」


アルマ「それについてはアリメラの木の鉋屑で防護できるので、今のところは大丈夫です。今のところは」


ラダ「実践でどういう運用をしていくかが課題だね。箱や袋からいちいち取り出してたら宝石魔法のメリットが消えちゃうし」


アルマ「携帯性の簡易さも売りですからね。そこはなんとかして、いい感じに取り扱っていただきたいっ!」


ペーシェ「結界で試してみたけど、周辺環境がマナに満たされただけでも魔法が発動しちゃったもんね。メリットがそのままデメリットになるジレンマ」


フィアナ「それが最大の悩みどころです。宝石魔法の課題の1つですね」


アルマ「デメリットに上げたんですけど、宝石魔法ってポテンシャル以上の威力がでないんですよね。威力が頭打ちなんです。でも少し安心でした。魔術師の存在価値が無に帰すかと思いましたから」


ペーシェ「宝石魔法の威力が高すぎると魔術師の立場なくなっちゃうもんね。そりゃ威力が高いに越したことはないとはいえ」


エイリオス「個人的には複合魔法が構成できなかったのは残念じゃのう。多様な魔法を複雑に融合させれば、超高威力の魔法をバンバン撃てると思ったんじゃが」


ディア「魔法自体に遅延魔法をかけても無理でしたね。宝石魔法で発動させた魔法は組成がかっちりしていて、分解して再構成するのは不可能に近いかと」


シェリー「それこそ宝石魔法の利点なんですけどね。組成がしっかりしてるから、確実な魔法の発動が可能になるからです。メリットとデメリットが表裏一体とは、よくできてるものです」


華恋「個人的にはアルマのフレイムベールのように、オートで攻撃から身を護ってくれるマジックアイテムがほしいんだけど、常に魔力を流さないと発動させられないってことはフレイムベールの宝石魔法は作れない?」


アルマ「不可能ではないですが、オート発動型の魔法を宝石魔法で運用しようとすると、常に魔力を流す必要があります。常に魔力を流し続けるか、エーテル体結晶やマギ・ストッカーと一緒に使うかのどちらかですね」


華恋「エーテル体結晶…………宝石魔法の単価だけでもとんでもないのに、それにくわえてエーテル体結晶なんて…………」


エイリオス「エーテル体結晶ってなに!? それについて詳しくッ!」


アルマ「電池の魔力バージョンみたいなもんです。インヴィディアさんにしか作れないのでお値段べらぼうです」


エイリオス「そのインヴィディアって人、誰!?」


アルマ「ギルド【暮れない太陽】のメンバーです。今は外国で一国の主様です。とっても素敵でかっこいい女性です!」


華恋「インヴィディアさん、超かっこいいよね! エーテル体結晶じゃなくてマギ・ストッカーで代用できないの?」


アルマ「マギ・ストッカーに嵌め込む形で常時発動させることはできるはずです。それもまた研究課題のひとつです。でもマギ・ストッカーは異世界間交流が始まってからなので、ひとまずは他のことに着手する予定です」


フィアナ「マギ・ストッカーと宝石魔法を組み合わせて、常時発動できる結界や防御魔法の開発は最優先ですね。前線で戦う方々にとっては物足りないかもしれませんが、戦闘能力を持たない一般人からすると、より強固なシェルターの開発は急務です」


ホウ「俺としちゃあ、夜の野営で安心して眠れるシェルターがあるのは助かるな。攻撃系のマジックアイテムなんかよりよっぽど助かる」


リン「わたしも同感です。安心して眠れる場所があるというのは、本当に幸せなことだと、エルドラドで生活して痛感しました」


フィアナ「宝石魔法によるシェルターの建造を急ぎましょう!」


シェリー「リンのことになると盲目になるな。護国の騎士を拝命する私としても、防御系の魔法を充実させたい」


バスト「シェリーの言葉には一理ある。しかし、デメリットでもあげたように己の研鑽を怠りそうで怖いのう。自助努力の啓蒙をしてゆかねば」


ブラード「便利になりすぎると怠けたくなっちゃいますよね。魔剣もそうですが、己との闘いといったところでしょうか」


暁「道具は所詮道具だからな。扱う者の意識がなにより大事だ。扱う者と言えば、マナの属性一致か不一致かで威力が違ったな。火のマナ持ちのアルマとエイリオスさんは、火のマナを内包した宝石魔法の火属性の魔法(フレイムスピア)は極めて高い威力でした。ですが他の人たちは火属性以外のマナ持ちのようで、一律に威力は高かったですが、2人ほどの威力ではありませんでした」


エイリオス「マナと魔法の属性が一貫してると威力が増すようじゃな。土のマナ持ちのシェリーちゃんが土のマナを内包した宝石魔法で土属性の魔法を放つと威力が増大するわけじゃ」


シェリー「使用者のマナ。宝石魔法に内包したマナ。それら2つと同一の属性魔法になると威力が最大化するわけですね。使用者のマナと宝石魔法に付与する属性魔法はともかく、宝石に内包されたマナは――――アルビノマギの脱色化現象で加工したあと、魔力の染色は宝石魔法でも可能なのか?」


アルマ「可能だと思います。魔剣に限らず、特定のマジックアイテムでも同じことをしてますから」


フィアナ「それは素晴らしいですね! 宝石は鉱物であることから、ほとんどが火か土のマナを内包してますから、任意に加工して内包するマナを選択できるのは極めて有意義なことです。問題があるとすれば、人為的に魔力の脱色化現象を起こせるアルビノマギの人を探して訓練してもらわなくてはならないということですが」


ジャック「問題はそれだけではありません。今日教えてもらいながら挑戦しましたが、宝石魔法に魔術回路を刻むことができませんでした。魔法の扱いだけならともかく、鉱石の組成についても詳しくならないといけないとなると、ハードルも技術力の高さも折り紙付きです。アルマさんとフィアナさんと、エイリオス氏は簡単に作ってましたが」


アルマ「いっぱい練習しましたっ!」


フィアナ「鉱物の組成については一日の長があります」


エイリオス「勘」


ジャック「勘…………っ!」


アルマ「さすがエイリオスさんですっ! ちょーかっこいーですっ!」


シェリー「個人的にはあまりエイリオスさんをおだてないでほしいところなんだが……。それはともかく、宝石魔法にはデメリットもあるが、それを上回るほどのメリットがある。課題は山積みだ。ひとつずつ解消していこう」


リン「たいへんだと思うけど、頑張ってね。わたしにもできることがあれば協力する。でもあれだね、たいへんだけど、目的が達成されたらそれだけ喜びもひとしおだね。暁さんが言ってた。世話のかかる子ほどかわいい、って」


フィアナ「ですわね。実際、いまとっても楽しいです♪」


アルマ「ですよね。多少欠点があったほうがかわいらしいもんですよねっ!」


全員「「「「「(貴女が今それを言っちゃダメッ!)」」」」」


ペーシェ「やばいっ! よーしやることやったしそろそろ帰ろぎゃああああッ!」


暁「アルマ、セッカクダシキョウハセナカヲナガシテヤルヨ。ユックリジックリハナシヲシヨウカ?」


アルマ「ぎゃああああああああああッ!」


シェリー「アルマ……なんでそう墓穴を掘るようなことを言うんだ…………」

無事に(?)宝石魔法の研究に明け暮れることのできたフィアナたちは、棚から牡丹餅的展開でフェアリーたちと夢のような時間を過ごしました。

元々こんな予定ではなかったのですが、アルマが例に漏れず魔導防殻をぶっ壊し、得意満面になって気の緩んだペーシェがいらんことを言い放ってしまったばっかりに、まさか一般人を巻き込んでの異世界渡航。

まぁ成り行きに従っただけなんでしょうがないですね。作者が。


次回は、アルマ立案のパレスミステリーの進捗の確認をするために、ベルンの大学へ赴きます。

学術都市グレンツェンは街全体が大学のような環境なので、一般的な『学校』という環境を知らないアルマにとっては新鮮そのもの。

いったいどんな騒動を巻き起こしてくれるのでしょうか。

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