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宝石の輝きの先に 63

 ぱっくりと割れた皮からは甘い香りのする実がこんにちは。ねっとりとした感触の白い実はほとんどの人にとって初めての果実。


「どうやって食べればいいのでしょうか。恥ずかしながら、食べるのは初めてです」


 フィアナお嬢様は食べたことがない。基本的に彼女が果物をそのまま食べることはない。必ずパティシエの手を通して加工されるからだ。


「おほーっ! あけびの実なんて懐かしいのう。わしの若い頃なんかは山に採りに行って町で売って小遣い稼ぎをしたもんじゃ」


 エイリオス氏は大興奮。懐かしさとともに果実を取り出し、口に入れて楽しい思い出を噛みしめる。なんだかとっても微笑ましい。


「もっちゃもっちゃ。秋は旬の食材がたくさんあってたまりませんねー。それにしてもフラウウィードにあけびが採れる場所があったとは知らなかった。すみれさんが知ったら大興奮ですね。アルカンレティアに乗って近場の採取場所を探してみるのもアリですね。ぷっぷぷっぷっぷー」


 アルマさんは慣れた手つきで皿を口元に持っていって種を吐き出す。スイカを食べて口から種を吐き出す要領なのか。ちょっと恥ずかしいな。

 アルマさんの様子を見て暁さんが感心する。


「アルマ、種を取り出すの上手だな。そうだなー。あけびが採れるなら山菜の類もたくさん生ってるだろうな。万が一のための食材調達場所は確認しておきたい」

「アルマは元々東北地方にいましたからね。そこではよくあけびの実が生ってたので食べてました。あけびに限らず、甘い果実は大好物です。ので、秋の内にフラウウィードを探索しておいていただきたくっ!」

「参加者を募ってみよう。危険度が低く秋の実りを探すとなれば、初心者冒険者を中心に親睦会的な交流ができるかもしれないな。それと、秋は実りの季節だからな。食べすぎないように気を付けないと。あ、そうそう、あけびの皮はあく抜きして天ぷらにするので残しておいてください」


 皮まで食べるのか。メリアローザはほんとうに自然と共に生きる世界なんだ。

 どうりでどこか懐かしくて温かいわけだ。

 秋の食材を巡って親睦会。いいな、それ。ラダさんと一緒にエメラルドパークで開催される秋の食材採取体験に行きたい。


 カルティカさんは秋の実りと聞いてため息をついた。少し悲しい表情が見てとれる。


「秋の実り探索かー。ちょー楽しそうだなー。できることならティカも行きたいなー。行きたいぬぁわぁ~♪」


 カルティカさんは抱き着くようにアルマさんに迫る。圧がすごい。自分も行かせろのサインである。

 だけどそうもいかない。我々は異世界人。長く留まることはできない。おいそれと立ち入ることもできない。

 シェリー騎士団長がカルティカさんの肩を叩く。


「カルティカ、気持ちは分かるが諦めろ。我々は異世界人。本来はいない存在なんだ」

「居て悪いわけじゃないですけどね。カルティカにも生活があるし、人間一人、世界からいなくなるのは不都合が起こるかもしれません。でも、あたしはいつでも大歓迎だから、機会があったらしっかり準備して訪れてくれ。その時はめいいっぱい歓迎するよ」


 暁さんの誘いにカルティカさんの声が大きくなる。


「わぁ~い♪ ぜひぜひ、その時になったらよろしくお願いしますっ!」

「その時になったら友達全員連れて来てくれ」

「お任せくださいっ! クラスメートを全員連れてきます!」


 カルティカさんのガッツのポーズの背後で、シェリーさんがいいことを思いついたようなことを言う。


「なるほど。ダンジョンで演習というのもアリだな」

「わ、わぁ~…………」


 鬼のシェリー鬼神(騎士)団長が怖いこと言い出した。カルティカさんのテンションが著しく低下する。


「異世界間交流が始まってメリアローザの技術を体験するためには、思いっきり魔法をぶっ放せる環境が必要ですからね。ダンジョンは最適ですよ!」


 アルマさんもノリノリ。カルティカさんの表情が暗くなる。


「アルマ、魔法をぶっ放すのもほどほどにな」

「ひゃ、ひゃひっ!」


 暁さんがアルマさんの肩をぽんと叩く。前科がいっぱいありますからね。魔法が好きなのはわかりますが、ぶっ放すのはご自重くださいな。

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