宝石の輝きの先に 56
追撃するようにスイーツが襲来。
金色に輝くフラウウィードの看板商品。シフォンケーキの登場だ。
ふわふわのあまあま。甘さ控えめの代わりに濃厚な卵の香りがする。同時に花のような香りが吹き抜けた。
そういえば、お嬢様は出張に帰ってきてからシフォンケーキを食べてない。以前はあんなに大好きだったのに。もしや、これを食べてしまったから?
「ご名答です。フラウウィードのシフォンケーキがおいしくておいしくて。これ以外のものを食べる気がなくなってしまったのです」
「たしかにものすっごくおいしいです。独特の甘さと卵の風味が素敵です。どんなお砂糖を使用されてるのですか?」
フラウウィードでスイーツを開発してるというメルティさんに問うと、きょとんとした表情をして笑ってみせた。
「フラウウィードのシフォンケーキは砂糖を使ってません。小麦と、卵と、牛乳と少量のバターと水だけです。突き詰めて突き詰めて、必要なものを突き詰めてこだわって作りました。私の傑作です!」
傑作というだけあってすんごくおいしい。フェアリーたちも顔を埋めてシフォンケーキのふかふかっぷりを堪能する。かわいすぎるっ!
1人分のシフォンケーキをぺろりと平らげた。至上の紅茶を飲んで一服すれば最高の時間のできあがり。
奥方様と出会ってお嬢様のメイドになっていなければ、こんな時間を過ごすこともなかった。
運命とは、なんと数奇なものであろうか。
そんなことを考えてたせいか、フィアナお嬢様がとんでもないことを提案する。
「みなさま、もしよろしければゲームをしませんか?」
「「「「「ゲーム?」」」」」
ライブラから取り出したるは数十本の棒と箱。これはまさか……。
「王様ゲームです♪」
なんでそのチョイスッ!?
至上最悪のパーティーゲーム。最初に開発した奴を暗殺したいゲームランキング第1位。
一般常識を知らないお嬢様の唯一の欠点が暴発した。
「王様ゲームって、なぁに?」
ローズマリーが首をかしげた。なにより彼女たちの関心はひとつ。
「それって人間とフェアリーが一緒に遊べるゲームなのですか?」
月下が心配そうに尋ねる。フェアリーと人間では体格差がありすぎることを心配してるのだ。
「大丈夫ですわ。フェアリーと人間が一緒に楽しめるゲームです」
「「「「「やったぁー♪」」」」」
楽しめるかどうかは疑問がありますな。
でもフェアリーが乗り気なので止めるわけにはいかない。
止めるわけにはいかないが、できればやりたくない。怖い。なにを命令されるかわかったもんじゃない。




