宝石の輝きの先に 50
今のフィアナお嬢様には、ベルン寄宿生になってから友達ができるか心配してた姿はどこにもない。
メイドとして、貴女に仕える者として嬉しゅうございます。
「3つ目はロゼのローズシロップです。これはぜひとも、ペーシェ様に当てていただきたく思います」
「もしかして桃を使ってるの?」
「え!? どうしてわかったのですか!?」
「あたしが桃が大好物だから」
なるほど。名指しした瞬間に答えがバレちゃうやつだった。
そうと思わず素で驚いちゃうフェアリーマジフェアリーっ!
ともあれ、まずは全員が堪能する。元々甘い香りで有名なロゼに、甘い果物筆頭格の桃を織り込んだローズシロップは5つの中でダントツに甘い。
これこそタルトタタンで使いたい。とんでもなくおいしいスイーツになるに違いない。
「4つ目はレッドローズです。これは比較的簡単だと思います。ぜひともご堪能ください」
赤雷にとって、いちじくは身近な存在なのかもしれない。しかし、都会育ちの人間にいちじくの味を当てられるだろうか。
個人的にはかなり難しいんじゃないだろうかと思う。
「これ、最近食べたことがあるような?(カルティカ)」
「正直言って、レッドローズの香りが凄まじく強くて果物の果汁とか全然分からん。でもおいしい。情熱的なレッドローズの香りが凄い(ペーシェ)」
「パーリーでも不定期で手作りのローズシロップが売られてるよな。あれも凄い味だったが、これもなかなか鮮烈だ。鮮やかで、情熱的で、とても印象的な味わいがする(シェリー)」
「たしかに、4つの中で一番濃い味だ。だが好きなテイストである。飲み下した最後に感じるかわいらしさに似た甘さは、どこかで食べたことがあるな。どこだったか?(バスト)」
「わたしも全然わからない。でも、知らないを知るのはとっても楽しい(リン)」
「その言葉、兄貴が聞いたら泣いて感動するからあとで聞かせてやってくれ。男性陣はどうですか?(暁)」
「恥ずかしながら全く。レッドローズのローズシロップがとてつもなく素晴らしいということしか(ディア)」
「同じく。しかし、こういうのを彼女にプレゼントしたら喜ぶんだろうな(ラダ)」
「ローズシロップであれば、まだ在庫があったはずなので、よければお譲りしますよ?(暁)」
「残念ながらあげる相手がいない。母親へのプレゼントに持って帰れるならそうしたいな(ラダ)」
「えっ? 彼女はいらっしゃらないんですか!?(マリア)」
僥倖っ!
っと、柄にもなく大きな声を出してしまった。
謎の焦燥感に駆られ、私は取り繕うように言葉を続ける。
「あ、ええと、宮廷魔導士見習いといえば高給取りなうえに将来性抜群じゃないですか。なのでみなさん、彼女さんがいらっしゃるのかと」
すると、彼らは暗い顔をして俯いた。
「出会いが、意外にも、ないんです」
「で、でも、女性の宮廷魔導士見習いはいらっしゃるんですよね?」
「いるにはいますが、彼女たちも研究一筋で。あと、あまり大きな声では言えませんが、ユノ女史やマルタのような変わり者ばかりでして」
ラダさんから心の涙が流れた。




