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宝石の輝きの先に 47

 受け止めてくれたことにお礼を言って、冷めないうちにと席に戻る。戻ってもう一度カップを傾けた。またぶっ飛んでくるんじゃないか。そう思い、構えてみるも杞憂に終わる。どうやらおいしいに耐性ができたようだ。


「おいしい。どうしてこんなにおいしいの?」


 満面の笑みと眩しいばかりの瞳の輝きがノルンを襲う。彼女たちの笑顔なら、私ももっと襲われたい!


「秘訣は茶葉の旨味を引き出し、えぐみや苦みを抑えながら、ミルクと調和させる技術です。牛乳の質、茶葉の質、その日の気温と湿度から、分量や食器の温度に至るまで、全てに気を配り、最高の紅茶にするのです。それが私のお仕事なのです。気に入っていただけて、私もとっても嬉しいです♪」


 誇らしげに語る彼女の努力は尊敬に値する。

 通常、自慢話というのは聞いてて飽き飽きするもの。だけど、彼女の情熱と、誰かを紅茶で幸せにしたいという想いがとても心地よい。

 かくいう私も彼女のミルクティーに出会ってしまい、市販のペットボトル飲料は買えなくなった。それほどまでに、ノルンの淹れる紅茶は絶品なのだっ!


 それがフェアリーの心にも届いた。他人事ながら、とっても誇らしく感無量です。


 なんて幸せな時間なんだ。青春時代に失った幸福な時間が一挙に押し寄せてきたみたい。

 もしかすると、私の人生のターニングポイントなのかもしれない。運命の歯車が回り出した。いや、力づくでも回してみせるっ!


 その後、フェアリーたちは時計の針が3時を迎えるより早く、ティーパーティーの準備をしなくちゃと騒ぎだす。騒ぎ出すと言っても、お祭りのようにはしゃぎまくる。

 なんてかわいいわたわたなのだ。一生愛でていられる自信があるっ!


 ♪ ♪ ♪


 場所を移してフラウウィードのカフェテラス。

 見渡す限りのハーブの園。カフェはセチアさんの工房同様、牧歌的なウッドデッキ。売店も併設されており、ハーブにまつわる商品が売られてる。

 匂い袋、ハーブを混ぜた石鹸、量り売りの乾燥ハーブ。ハーブ、ハーブ、スイーツ。ここは魂が行き着く最後の場所に違いない。


「ここがヴァルハラだと言われても、疑う余地がありません」


 柔らかな風が頬を撫でる。そよぐハーブの波、真っ青に澄み渡る空。青と緑にあふれた晴天を臨んでぽろりと言葉が漏れる。

 マジで涙が出そう。

 私にも、晴れ渡るような人生があったのだろうか。暗黒の過去は消えない。だけど、これからは変えられる。変えてみせる。変えたい。私も幸せになりたいっ!


 さて、卓上を見渡してみよう。彼女たち専用のラウンドテーブルを用意してテーブルメイキングしてる。フェアリーたちは鼻歌混じりで楽しそう。


「しっあわせな~すいぃつたべて、みーんなといーっしょが嬉し~な~♪ 1日1回、みんなと一緒、だーからとってもしあわせだ~♪」


 なんて尊いんだ。想像や創作物で語られるフェアリーの無量大数倍かわいい。

 老いも若きも、男も女も関係ない。フェアリーのかわいさは全てに平等である。


「フェアリーたちは本当にかわいらしいですね。マリアさんはフェアリーたちと3時のティーパーティーの準備をされてたんですよね。どんな準備をされたのですか?」


 隣に並んだ男性が話題を振ってきた。ラダ・グリーンフィールド。宮廷魔導士見習いにして、エイリオス・フォン・バルクホルン氏の弟子。超優秀な金の卵。

 だからというわけでないが、ちょっと緊張する。仕事柄、男性と会話することはほとんどない。近くにはナイスシニアの執事くらい。黒服のSPは論外。

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