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宝石の輝きの先に 41

 続いて、アルマは容赦なく暁さんにフレイムスピアを放つ。目算の時速は150キロ前後。人間が反応できる速度をゆうに超える。だけど、暁さんも怪物。これをなんなく切り伏せてしまった。


「よくもまぁ、魔法を『斬る』って発想になるよなー。俺だったら絶対避けるけどなー」


 でしょうね。ホウさんの言葉は正しい。暁さんの判断は間違ってない、が、正しくはない。


 どんどん行こうと言わんばかりにエイリオス氏が前に出た。ストーンウォールに1発。暁さんに向かって1発。なんの躊躇もなく撃ちよった。撃てと言ったのは暁さんと言えど、なんかもうちょっと遠慮的なもんないの!?


「すまんな、ペーシェ。おじいちゃんはそういう性格してないんだ」

「よく今まで生きてこれましたね」

「運が、よかったのかもしれないな…………」


 いるんですよね、こういう滅茶苦茶なことしても、なんだかんだでうまくいっちゃう人って。それなりの人脈と権力と資金と経験と実績となんやかんやあるんでしょうけども。


 お弟子さんも魔法を放ち、フィアナさんも仕事を済ませ、シェリーさんも撃ちこんだ。ロリム、ホウさんと続いて次はあたしの番。まさか一般人のあたしに出番があったとは。


「言っちゃ悪いが、ペーシェの魔力を見て、一般人と判断する人間がこの世にどれだけいると思う?」

「ですよねー」


 シェリーさんのつっこみを全肯定です。

 自覚してたのでちゃっちゃと作業を済ませよう。

 ついでに、気になってたことのひとつを試してみよう。


 宝石魔法の周囲に立方体の結界を生成。内と外を作る。

 結界内の魔素濃度を少しずつ上げていく。すると思った通り、結界内が一定の魔素濃度を越えた瞬間、宝石に刻まれた魔術回路に魔力が満たされて発動した。魔素の濃度=魔力量。宝石魔法に使用してる宝石の体積からして、魔力量が約30のところで発動。つまり、外的魔素濃度下限30といったところかな。


「ペーシェ、今のは環境魔素濃度で宝石魔法が発動する下限値を調べたのか?」


 さすがシェリーさん。飲み込みが早くて助かります。


「ええ、それともうひとつ。宝石魔法は魔力の伝達効率が非常に優れてます。なのでもしかすると、外的環境によっては、魔素に満たされただけで魔術回路に魔力が満たされて発動しちゃうんじゃないかと仮定したんです。最悪なことにドンピシャでしたね」

「つまり…………高濃度の魔素に満たされた環境では自動発動してしまう、ということか」

「過ぎたるは及ばざるが如し、ですね。管理は徹底しないとたいへんなことになりそうです。ただ、威力については人間が故意に魔力を込めた時と比べてかなり落ちるようです」


 デメリットを見つけてしまった。外的環境によっては人の意に反して魔法が暴発してしまう。想像しただけでも恐ろしい。

 だけどこれは宝石魔法を研究するに際して避けては通れないデメリット。さて、どう解決したものか。


 ベルン組は頭を悩ませる。しかし、アルマはきょとんとした顔をして答えてみせた。


「それならアリメラの木で作った箱で保管しましょう。あれは魔力を一切受け付けない特殊な木材です。魔術師としては嫌いなアイテムですが」

「そういえば、魔力をよせつけないために、アナスタシアさんの刀を収納する箱にも使ってたね」

「ですです。ひとまずすぐに用意してもらいましょう。暁さんの威光で」

「威光て…………」


 できるだろうけど。納得した暁さんはロリムを使いに出した。

 自分の名前を出せばすぐに用意してくれるだろう、と。さすが暁さん。ギルドマスターの威光は凄まじい。


「暴発されては研究中止は目に見えてるからな。冒険者の生存率向上や成果の向上はメリアローザの暮らしに直結してると言っても過言じゃない。最優先で用意させるさ。さて、ひとまず、リン以外は全員、同じように宝石魔法を撃ってもらったので、小休憩とともに所感を共有して記録しよう」


 リンさんは大恩ある暁さんに魔法を撃てなかった。そもそもリンさんは戦闘職でもなんでもない。魔法適正の高い獣人というだけで、本職は機織り。性格的にも人に魔法を撃てるわけがない。

 暁さんが魔法をぶった切れると言っても、無理なものは無理なのである。

 優しい性格のリンさんには好感が湧いちゃいますな。

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