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宝石の輝きの先に 38

以下、主観【ペーシェ・アダン】

 見渡す限りの草原と青い空。景色のずっとずっと奥には水色にかすむ霊峰が連なる。

 風に揺れる背の低い花々に名前はなくも、力強く天を目指し育つ姿には活力と、心に穏やかな時間を与えてくれた。

 牧歌的な景色を楽しむように、老齢のおじいちゃんと金髪ツインテールの少女ははしゃぎまくる。


 宝石魔法を両手に握りしめ、それはそれは楽しそうに魔法を空へぶっ放しまくった。

 ペーシェ・アダン(あたし)は楽しそうな2人の背中を眺めて虚無感を覚える。


「これいつまで続けるんですか? 宝石魔法の実証実験のための時間ですよね?」


 あたしがフィアナさんに問うと、諦めの籠ったため息とともに言葉を漏らした。


「お二人の気が済むまで、ですわね。ところで、ペーシェさんはこちらにご参加でよろしかったのですか? ペーシェさんは直接、宝石魔法には関係ないと思うのですが」

「いやまぁ、ウララの占いからすると、どうもあたしはなにかと戦わないといけないらしいので。手札は多いに越したことはないので」

「その時になったら、微力ながらお手伝いさしあげます。なんでもおっしゃってください!」

「あ、ありがとうございます……」


 フィアナの対応がマルコの姉であるあたしの好感度上げのためと思うと辟易する。しかし、それでも、宝石魔法の威力は喉から手が出るほど欲しい。

 内側からとはいえ、魔導防殻をぶち抜いてしまう代物だ。攻撃力においてそんじょそこらの宮廷魔導士を越えてると言って過言ではない。


 これがあれば不得手な魔法も使える。不意打ち的に使うこともできる。考えれば考えるほど、悪さできる方法がいくつも思いつく。ふっふっふっ。


「ペーシェがまた面白そうなことを考えてるな。よければ聞かせてもらえるか?」

「暁さんにお話しするようなことじゃありませんぜ。それより、将来的に冒険者が使うなら、誰か冒険者を呼んだほうがいいと思うんですけど」

「それなら心配ない。(ホウ)を呼んでる。そろそろ来る頃だ」


 ホウ。聞いたことがない名前だ。あたしは修行のため、一か月ほどメリアローザに滞在したことがある。というか、一週間前までずっとここにいた。

 修行の一環ということで、桜にダンジョンに登らされた。そこで多くの冒険者の技を見て盗んだのだ。だから冒険者の顔と名前は全部覚えてる。つもりだった。


「ホウって名前の人は知らないんですけど、外国にいるギルドの人ですか?」

「知らないのも無理はない。ホウはダンジョンの完全攻略を目指すパーティーの1人だ。だから1年のほとんどをダンジョンの中で過ごしてる」


 なるほど。そりゃ知らないわけだ。

 しかしダンジョンの完全攻略とな。それはまたとんでもない偉業に着手してるな。


 噂をすればなんとやら。ホウと呼ばれる人物と、彼の隣に見知った顔が並んでいた。

 エルドラドにいるリンさんだ。

 リンさんはフィアナさんを見るなりかけより熱烈なハグ。大親友の久々の再会である。


「リン、久しぶりです! その後おかわりないようで?」


 フィアナさんも満面の笑顔。


「フィアナも元気そうでよかった。今日はにいさんと一緒にわたしも呼ばれたの。フィアナの力になれるって聞いて。ですよね、暁さん」


 親友の力になれると知って喜び勇む彼女のなんて尊い笑顔だろう。


「そうだとも。宝石魔法と言ってな。リンとホウにはその魔法を発動させる手伝いをしてほしい。ホウについては、経験をふまえて所感を聞かせてほしい。の、だが、大丈夫か?」


 暁さんの言葉に答えるより先に、ホウと呼ばれた犬の獣面(ウェアフェイス)の獣人が大粒の涙を流して地にひれふした。なにがあったというのか?

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