宝石の輝きの先に 33
「暁姉ちゃん、おかえりなさい! とっても素敵なワンピースだね。どこにおでかけしてたの?」
美少女はキラースマイルでハグ。
「ただいま。アルマのところにでかけてたんだ。それと、アルマの友人を連れてきた。一緒にお昼ごはんにしよう。みなさんも、お代はあたしが持ちますので遠慮なく」
暁さんがそう伝えると、お人形さんたちが楽しそうにはしゃぎまくる。
「今日のお昼ごはんはしいたけだよっ! ぷにぷにジューシーな焼きしいたけ!」
燐光を放つローズマリーの花を背負った、身長15センチほどの少女がくるくる踊った。
「卵豆腐もあるんだよ。ぷにぷにぷるぷるのたっまごどっぉふぅ~♪」
バニラの花を背負った少女は暁さんのぷにぷにほっぺに抱き着く。
「おかえりなさいませ。白のワンピース、とってもお似合いです」
「朱色のカーディガンもとっても素敵です」
赤と白の彼岸花の花を輝かせて、同じ顔の2人の少女は微笑んだ。
「あっ! 初めましての人たちがいます。みんな、自己紹介しましょう! それではみなさん、ご着席くださいな♪」
月下美人の花の少女が掛け声をして整列。
着席を促されて、現実を直視できないでいるメリアローザ初体験組はテーブル席に座る。
「私はローズマリー。ローズマリーの花から転生したフェアリーだよ。よろしくね♪」
「私は月下。月下美人の花から生まれたフェアリーです。よろしくおねがいします♪」
「わたくしは赤雷。赤い彼岸花の妖精です」
「わたくしは白雲。白い彼岸花の妖精です」
「バーニアはバニラのお花のフェアリーだよ。よろしくね♪ よし、自己紹介が終わったところで、バーニアがみんなに魔法をかけちゃうぞっ!」
フェアリーと名乗る少女の1人、バーニアがライブラから取り出したのは4本のバニラビーンズを束にしたバニラスティック。
そんなものでいったいどんな魔法を繰り出すというのか。
ティカの鼻先までふわりと浮いてみせた彼女の表情は真剣そのもの。
「まずはお名前、教えてくーださいっ♪」
「カルティカ。名前はひとつだけ。ティカって呼んでほしいな」
「ティカっていうんだ。素敵な名前だね。よし、それじゃまずは深呼吸しよう」
言われるがまま深呼吸してみる。ゆっくり息を吸って、吐いて、吸って。
準備が整ったと思ったバーニアは、バニラスティックをティカの鼻先に突き出して呪文を唱えた。
「あなたはどんどんバニラが大好きになる~。あなたはもっともっとバニラが大大大好きになっちゃう~…………どうっ?」
「ばにらだいすきになっちゃった~♪」
「よしっ!」
満面の笑みと全身全霊のガッツポーズを見せた彼女は満足して次の獲物にロックオン。フィアナさんのメイドの1人に目をつけた。
目と目が合うとはこのこと。希望に満ちた目で、満面の笑みで、やってやるぞと気合いの入ったオーラから逃げられる者はいない!
そうして全員、バニラ大好き魔法にかかったのだった。
「ぃよしっ! これでまたバーニアの野望の成就に一歩近づいたぞっ!」
「バーニアの野望とは?」
すかさずティカがつっこんだ。
「世界中の人間をバニラ大好きにするのだっ!」
「なんて素敵な野望なんだ。世界平和待ったなし!」
バーニアの野望が叶ったなら、リアルにガチで世界平和を実現できるかもしれない。




