宝石の輝きの先に 31
なにかわからないがペーシェさんは失言をしたらしい。その理由はすぐにわかった。
新しいおもちゃを見つけた少年が如く、魔法ぶっぱっぱしてた怪物が襲ってくる。
「それが件のマギ・ストッカーかね! どういう構造になっとんじゃ!? レナトゥスでもまだ未完成なんじゃ。どういう魔術回路をしとるんじゃ。どんな素材を使っとるんじゃ。魔鉱石以外の素材も利用しとるんじゃろ。わしも完成品のマギ・ストッカーが欲しい!」
おじいちゃんは高血圧でぶっ倒れないか心配になるほど大興奮。
「魔力がすでに全快ってどういうことですか!? ワープを使ってこっちに来たのは今朝ですよね!? というか、ハティさんにお願いしてワープしてきたんじゃないんですか!? ペーシェさんのユニークスキルってなんですか!? アルマだってワープの魔法はまだ使えないのにっ! ずるいずるい! 覚えるコツがあるなら教えてくださいッ!」
魔法大好きっ娘が迫りくる。蛇に前足も後ろ脚も翼も牙も爪も角もつけたうえ、炎まで吐けるように変身した竜を2頭も召喚してしまう。
即死魔法も死ぬ4つの瞳の輝きに、自称腹黒ペーシェさんはたじたじ。エイリオス氏の弟子も背後でこそこそ話し。
「マギ・ストッカーと言えば、ベルンとエキスプレス合衆国で共同開発してるマジックアイテム。その完成品が一般市民の手に? 信じられない。嘘なんじゃないか?」
「しかし、エイリオス氏の反応を見る限り本物っぽいぞ。どういうことだ?」
援護射撃のように宮廷魔導士見習い兼エイリオス氏の弟子が疑問を浮かべる。
魔法に詳しくないメイドさんたちもひそひそ話し。
「ワープってなに? というか、あの子ってレナトゥス在籍の人間じゃないよね。名簿にはなかった」
「彼女はフィアナお嬢様の片思いの相手、マルコ様のお姉さまです。つまり剣聖・サンジェルマン様の長女。どんな魔法が扱えても不思議ではありません。それにグレンツェン市民の魔法の扱いは幼少の教育で熟達してると言います。長所を限りなく伸ばすという点においては、ベルン寄宿生と同等か、それ以上の技量と聞き及びます」
実際、サマーバケーションで見たヴィルヘルミナの太極拳とやらで戦士職男子が一撃で倒された。
噂も聞いたことがある。義務講義の護身術のクオリティは尋常じゃないらしい。
どうすれば解決するのか。困った挙句、ペーシェさんは暁さんに泣きついた。
「すみません、暁さん。口が滑りましたーーーーっ!」
「素直でよろしいっ!」
暁さんはがっくりと肩を落として覇気のある返答を返した。
肩を叩いたのはシェリーさん。これからどうするかを相談する。
「どうする? さすがにここまでくるとハティの極大魔法でもごまかしきれないっぽいぞ?」
「ええ、ハティの極大魔法の効果は絶大ですが完璧ではありません。疑問が波及する前に楔を打っておきましょう。大丈夫です。来年には公開予定ですから。みんな大人ですし。口は固いでしょう。ローズマリーたちを見たとして、しゃべっても誰も信じないでしょう」
なんかわからんけど、秘密を共有されそうな予感。
ハティさんの極大魔法ってなに?
疑問が波及しないように楔を打つって、絶対なんかヤバいやつじゃん?
来年には公開予定って、マギ・ストッカーの著作権的ななにか?
ローズマリーって人を見たとして、しゃべっても誰も信じないってどんな人?




