宝石の輝きの先に 30
絶句する我々をよそに、孫の催促でおじいちゃんがストーンウォールに向き直った。
暁さんの腹のなかに心配がたまる。
「シェリーさん。魔法の扱いに関してエイリオス氏は世界屈指ということですが、えぇと、大丈夫なんですか?」
具体的に言葉にするのが怖くて言葉を濁した。宝石魔法の良き研究は暁さんも望むところ。しかし、彼は、あまりにも、やんちゃすぎる。
シェリーさんも苦虫を噛みしめたような顔をした。否定したい。しかし、否定する材料が少なすぎる。
「実力と、実績だけは、あるんです。が、中身が、ちょっ…………かなり子供でして。あの調子です」
あるだけの宝石を宝石魔法と化し、とにかく魔法をぶん回してぶっ放す。それはそれは小気味良い爆発音を炸裂させてストーンウォールを破壊していく。
壁がなくなればシェリーさんに催促。準備ができ次第、再び魔法をぶっ放す。これの繰り返し。ティカはおろか、主任研究員のフィアナさんですら入りこむ余地がない。
というより、入っていくとたいへんなことになる可能性極大。嵐は過ぎ去るまでじっと待つが超吉。
満足するまで待ってみるも、ティカたちのお腹の虫のほうが先に根を上げた。
野戦演習場はベルン首都からおよそ100キロ離れた山林の中にある。時速60キロのヘリで移動しても1時間半以上はかかる。輸送してもしかり。逆算して、そろそろ移動しないとぐーぺこで集中力が切れる。
特になにもしてないが。
なにかできる状況でもないが。
「フィアナさん。お昼ごはんはどうしますか?」
「わたくしもそろそろと考えております。ですが……」
視線の先にはちっちゃな子供とおっきな子供がテンションマックスで魔法ぶっぱぶっぱ。
それはそれは楽しそうに魔法ぶっぱぶっぱ。
魔法ぶっぱっぱするとお腹が減らなくなるのだろうか。
「暁さんはお昼はこちらで?」
ペーシェさんが暁さんにお昼ごはんを催促する。出資者の意向は無視できまい。
暁さんがお昼ごはんにしようと言えばお昼ごはんに、ティーパーティーにしようと言えばティーパーティーになるのだっ!
「今日はこっちで食べようと思う。ベルンには植物園に寄っただけで、飲食店には寄らなかったからな」
「植物園?」
「いろんな作物を見て回ったんだ。エルドラドで栽培できて、おいしくて腹持ちのいいものとか、甘い果物とかあればと思ってな。食べ盛りの子供たちがたくさんいるから」
「なるほど。さすが暁さん。感服いたしました。あたしがいればテレポで即移動できるので、いつでもおっしゃってくださいね。あ、なんなら」
得意満面のペーシェさんが、とんでもない蛇足を生やした。
「暁さんから貰った魔力保存器があるんで、ワープしてメリアローザでランチ&ティーパーティーにできますよ。ユニークスキルのおかげで魔力も全快ですから」
「それは頼もしい。が、賢いペーシェにしては珍しくミスをしたな」
「え?」




