宝石の輝きの先に 29
野戦演習場に軍用ヘリで到着。昨日までフィアナさんちの庭にヘリがあったはずなのに、いつの間にか十数人が乗れる軍用ヘリに変わってた。金持ちってマジすげー。
野戦演習場には満面の笑みのエイリオスおじいちゃんと、激務でげっそりしてる弟子の2人がいた。若手の弟子より元気なおじいちゃんってどうよ?
ちなみに、シェリーさんもぐったりしてた。ヘリ酔いではない。無邪気な子供じじいのおもりをしなくてはならないと悟ったからだ。
案の定、ストーンウォールを作らされてテンションサゲサゲ。プリマちゃんをなでなでする手に力がない。
到着するなり、エイリオスおじいちゃんは宝石魔法の刻印技術を速攻習得。あるだけの宝石に魔術回路を刻んで魔法を撃ちまくる。
アルマも一緒に撃ちまくり。両親はおろか、祖父のいないアルマにとって魔法を語ることのできるエイリオス氏は理想のおじいちゃん。エイリオスおじいちゃんは魔法も子供も大好き。拍車をかけて、魔法ぶっぱ祭りの開幕。
「いやぁー……壮観ですね……」
ティカからこぼれた言葉はこれだけだった。
「新しいおもちゃを得たアルマは生き生きしてんなー。暁さんはどう思いますか? 冒険者たちが使うに値するかどうか」
ペーシェさんは腰に手を当てて仁王立ちする暁さんに問う。
「素晴らしい威力だ。ミノタウロスくらいなら秒殺できるだろう。不得意な属性魔法でも、魔力を流すだけで使えてしまうなんて、本当に夢のような代物だ」
褒めて、しかしと言葉を返す。
「やはり魔剣と同じで、便利すぎるのも困りものだ。己自身の鍛錬をおろそかにしがちになる。そこをきちんと戒めていかなくてはな」
「ですね。便利なものは生活を豊かにしてくれますけど、怠惰のもとになってしまっては元も子もありません。メリアローザの冒険者なら大丈夫そうですけど」
「玄人はな。素人はどうしても背伸びしたがる癖がある。護身用とか、魔法を習得するための道具という認識を基本にしたほうがよさそうだ」
「威力が護身用から逸脱しちゃってますけど?」
シェリーさんが作った超頑強ストーンウォールを悉く破壊しまくってはしゃぎまくるおじいちゃんと孫がペーシェさんの視線の先にいる。
開けた土地。頑強な結界。壊していい壁。ぶっぱ大好き人間にとっては最高の環境。
華国の砂漠地帯を思い出す。砂以外なにもないことを逆手に取り、魔法撃ち放題ツアーを開催してる場所。なにもないことを逆手に取り、今では莫大な富を築いた地域として有名である。
この2人がそんなところに行こうものなら、四六時中、大地に空に魔法を撃ちまくるだろう。
と、思ったら、
「わし、ゴビ砂漠を出禁になっとるから魔法を撃ちまくるのできんのよ」
「「「「「いったいなにをやったんですか?」」」」」
この場にいた全員がシンクロした。
続くエイリオス・フォン・バルクホルン氏の言葉に、我々は愕然としたのだ。
「極大魔法のスーパーストームを試したら、砂漠が更地になりかけてしまってのう。出禁になっちった」
なっちった、じゃねえよ。
なんてことしてくれてんだこのじいさん。




